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ヘラクレスオオカブトムシ
学名:Dynastes hercules

グアドループ産の♂138mm(2004.3.7)
Data
和名 ヘラクレスオオカブトムシ
 別名:ヘルクレスオオカブトムシ,ヘラクレス・ヘラクレス,ヘラヘラ
体長 ♂:46〜178mm
♀:50〜80mm
分布 グアドループ諸島(バステール島),ドミニカ島,マルティニーク島,セントルシア島,ベネズエラ,コロンビア,エクアドル,ペルー,ブラジル,ボリビア,メキシコ(南部),グァテマラ,ホンジュラス,ニカラグア,コスタリカ,パナマ(北部),トリニダート トバゴ
寿命 約1年
飼育  産卵
マットを固め、その中に卵を1個ずつ産み付ける。
マットの質・木目の細かさ、湿度など条件が合わないと産まないことも多い。
マットの木目が細かくて握って塊りが崩れないものが適している。

 幼虫
通常のカブトマットで良好に育つ。
飼育温度やマットの質にも影響するが、良好な条件で飼育すれば、大型の♂でも約1年で羽化できる。
♀は複数飼育で適当な管理で十分であるが、♂は定期的なマット交換をすることにより、大型化かつ羽化を早めることができる。
もっとも、当サイト管理人の一番の特大個体である153mmは大プラケースで2頭同時飼育で、マット交換も非常に少ない環境から出たことを考慮すると、マット交換による刺激で成熟を早めてしまう可能性も考えられる。
完熟した添加発酵マットに菌糸の食いカスやフスマなどを添加することで、より大きく成長する。
菌床や発酵の浅いマットでは成長しない。

 成虫飼育
大食漢なので、エサ切れに注意する。
カブトムシとしては寿命が長く、1年近くも生きる上にフセツも取れることは少なく、長く楽しむことができる。
通常、湿度の高いケース内では上翅が黒くなってしまうが、通気を良くすることで、すぐに黄色く色付く。
♀の成熟は時間が掛かり、後食を開始して1ヶ月以上待たないといけないようである。
あまり闘争的ではなく落ち着いていて、観賞用としても適している。
飼育難易度 簡単 ★★★☆☆ 困難  通常、♀のほうが♂より早く羽化する傾向にあるが、♂の定期的なマット交換を怠らなければ羽化ズレも抑えられ、累代飼育も十分可能である。
解説 世界最大のカブトムシ。
黒い斑紋のある黄土色の上翅に、黒光りの前胸背板,長い胸角と、やや短めの頭角を持つ見事な大型カブトムシである。
胸角の裏には黄褐色の微毛が、頭部にはまるで金髪のような黄褐色の毛が生えており、大きいだけでなく、優雅で装飾的なカブトムシなのだ。
♀の上翅は荒く点刻されており、上翅の縁沿いと後方のみ黄土色に色付く。
従来12亜種に分けられており、熱狂的なマニアは各亜種揃えようと夢中だったと思われるが、Wikipediaによると現在は全亜種シノニムとなり、あくまで地域変異的な違いとされるようになったようだ。
12タイプに分けられているヘラクレスの中で、本個体群が最も胸角が太く立派になる。
ヘラクレス・ヘラクレスは大きく立派なことと、希少価値も手伝ってカブトムシの中で1番人気がある。
珍品というだけで大変高価なカブトも多いが、このヘラクレス・ヘラクレスが名実ともにカブトの中のNo.1ではないだろうか?
世界最大と言っても、胸角が体長の半分近くを占めるので、体の大きさはゾウカブトの仲間のほうが大きい。
稀に上翅が青白い個体も出現しブルーヘラクレスと言われて珍重される。
しかし、最近では直射日光により紫外線を浴びて変色した結果で遺伝ではないという説があるのと、ブルーだった親からブルーヘラクレスが出たという話もいっこうに聞かないため、あくまで本種はブルーになりやすいというだけで遺伝的なものではないようである。
個体差も多く中には超極太の胸角をもつものもいて、未だファンを魅了し続けている。
ギネスサイズでは178mmと超大型ではあるが、天然で160mmオーバーの個体すら稀で、飼育下では150mm以上の個体を作出することも容易ではない。
リッキーと呼ばれる個体群の方が飼育下では一番大きくなりやすいようである。
 
亜種が無くなってしまったのを残念に思う方も多いと思われるが、実際、ヘラクレス・オキシデンタリス(D. h. occidentalis)とヘラクレス・セプテントリオナリス(D. h. septentrionalis)のように棲息地が陸続きな上に混生・交雑までしているのに無理やり亜種にしている場合まであり、管理人の感想としては、スッキリしてよかったのではないかと思っている。シロカブトでもそうだが、人気のある種では、角の形状などの微細な違いによってあれよあれよと亜種や新種が出てきてしまい、これらもほとぼりが冷めればまた元に戻る可能性がある。 ただ、島で隔離されている個体群に関しては、安定した特徴を保っており、亜種という分類も妥当だと思われる。例えるなら、カブトムシTrypoxylus dichotoma septentrionalis)とオキナワカブトムシ(Trypoxylus dichotoma takarai)の違いと言える。つまり、人間が考えることなので、現状の分類も曖昧と言わざるを得ないのだ。
 
ヘラクレスオオカブトの中でも、本個体群はその特有の容姿から人気が高く、リッキーオキシデンタリスなどの比較的安価な南米大陸の個体群が頻繁にヘラクレス・ヘラクレスとしてオークションで売買され多数の方々が被害に遭っているのは残念でならない。当サイトの写真でさえ、詐欺師に使われることもあるので注意していただきたい。当サイトの管理人はオークションに出品することは決してありませんし、オークションや販売等で使用許可を出すこともありません。
 
ヘラクレスオオカブトは下記の12亜種に分けられていたが、現在ではすべてシノニムとされている。
  
旧学名 和名 分布
Dynastes hercules hercules ヘラクレス・ヘラクレス グアドループ諸島(バステール島),ドミニカ島
Dynastes hercules bleuzeni ヘラクレス・ブリュゼニ ベネズエラ東部
Dynastes hercules ecuatorianus ヘラクレス・エクアトリアヌス コロンビア東南部,エクアドル東部,ペルー北東部,ブラジル西部,ボリビア北部〜中央
Dynastes hercules lichyi ヘラクレス・リッキー ベネズエラ(北西部〜南西部),コロンビア(北部),エクアドル(北部の中央部),ペルー(中央部),ボリビア(北部,中央部)
Dynastes hercules morishimai ヘラクレス・モリシマイ ボリビア西部〜中央部
Dynastes hercules occidentalis ヘラクレス・オキシデンタリス パナマ(南部),コロンビア(西部),エクアドル(北西部)
Dynastes hercules paschoali ヘラクレス・パスコアリ ブラジル東南部
Dynastes hercules reidi ヘラクレス・レイディ セントルシア島,マルティニーク島(北部)
Dynastes hercules septentrionalis ヘラクレス・セプテントリオナリス メキシコ南部,グァテマラ,ホンジュラス,ニカラグア,コスタリカ,パナマ北部
Dynastes hercules takakuwai ヘラクレス・タカクワイ ブラジル西部
Dynastes hercules trinidadensis ヘラクレス・トリニダデンシス トリニダート トバゴ
Dynastes hercules tuxtlaensis ヘラクレス・トゥーストラエンシス メキシコ南部
関連リンク  ヘラクレスオオカブト飼育記
 ヘラクレスオオカブト写真集
 ヘラクレスオオカブトの蛹化
 ヘラクレスオオカブトの羽化
 ヘラクレスオオカブト 亜種の見分け方
 ヘラクレスオオカブトの飼育マニュアル
PHOTO

グアドループ産の♂138mm@
大型で角曲がりが全くなく、非常によい個体。
(2004.3.7)

グアドループ産の♂138mmA
太い胸角が魅力の個体群である。
(2004.3.7)

グアドループ産の♂138mmB
胸角は大変長く、頭部にはまるで金髪のような毛が生えている。
(2004.3.7)

グアドループ産の♂128mm
この個体は上翅の模様が美しい。
(2003.8.24)

コロンビア産の♂44mm@
リッキーと呼ばれる個体群。
(2004.3.13)

コロンビア産の♂44mmA
(2004.3.13)

コロンビア産の♂86mm
小型個体では角の発達が悪い。
(2002.11.17)

エクアドル産の♂125mm@
オキシデンタリスと呼ばれている個体群で、胸角は細い。
(2005.6.11)

エクアドル産の♂125mmA
(2005.6.11)

コスタリカ産の♂120mm
(2007.6.10)

翅の黒い♂138mm(グアドループ産)
羽化後、日が浅かったり、湿度が高いと、上翅は赤黒くなる。
(2004.2.11)

グアドループ産の♀@
♀では、上翅の縁沿いから後方のみ色付く。
(2004.3.21)

グアドループ産の♀A
基亜種とされた個体群は、特有の色をしている。
(2004.7.25)

コロンビア産の♀
リッキーと呼ばれていた個体群の♀は、鮮やかな黄土色のものが多い。
(2004.3.13)

産んで日が浅い楕円形の卵(グアドループ産)
産卵して2週間しても卵が真ん丸く膨張しない場合は無精卵である可能性が高い。
(2005.7.10)


3齢幼虫(グアドループ産)
巨大に成長し、通常100gは軽くオーバーする。
成熟すると黄色くなる。
(2003.6.7)

3齢幼虫(コロンビア産)
(2003.9.6)

前蛹
羽化したのはリッキーであった。
(2003.12.13)

蛹@(グアドループ産)
(2003.6.8)

蛹A(グアドループ産)
(2003.6.8)

蛹B(グアドループ産)
(2003.12.31)

蛹C(グアドループ産)
(2003.12.31)

羽化間近の蛹(グアドループ産)
(2003.7.20)

♀の蛹(グアドループ産)
(2003.4.19)

羽化中の♂(グアドループ産)
詳しい羽化シーンはこちら
(2003.7.20)

交尾(グアドループ産)
(2004.7.11)
 
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