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ラコダールツヤクワガタ | |
学名:Odontolabis lacordairei | |
♂77mm(2022/1/22 スマトラ産/WILD) |
Data | |||||||||||||
和名 | ラコダールツヤクワガタ 別名:ラコルデールツヤクワガタ,キモンツヤクワガタ,キモンオニツヤクワガタ |
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体長 | ♂:44.1〜90.0mm ♀:41.7〜49.0mm |
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分布 | スマトラ | ||||||||||||
餌 | 樹液や新芽の汁など 幼虫は発酵が進んだマットを食べる。 |
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飼育難易度 | 簡単 ★★★☆☆ 困難 | ||||||||||||
解説 | スマトラ島に生息するツヤクワガタの一種。 ♂は頭部に大きな逆三角形の黄褐色紋がある。 上翅は全体的に黄色で会合部沿いは黒色。 ♀は前胸背の前角付近に黄褐色紋があり、特徴的。 近似種はスペクタビリスツヤクワガタ(Odontolabis spectabilis)とヤスオカツヤクワガタ(Odontolabis yasuokai)で産地も同じで紛らわしいが、♂では以下の相違点がある。
♀では本種のみ前胸背に黄褐色紋があるため、容易に区別できる。 飼育記録については以下に飼育メモとして記載していきたい。 |
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飼育メモ |
2022年1月20日 アリストからスマトラ島ベンクール産のラコダールツヤクワガタのペアを落札した。 もちろん野外採集品で、♂77mm・♀42mmの大型ペア。今回は3ペアのみ入荷された中で一番小さい個体ではあるが数ミリの差なので大差はなく、できるだけ安く落札したほうがお得である。 本種はやや難しい部類に入るようなので、ブリード物がほとんど出回っていないように見受けられる。産卵用マットはスチーブンスツヤクワガタ(以下スチーブンス)に実績のあるフォーテックのカブト1番主体の赤枯れマットのブレンドの他、ヤエヤママルバネクワガタ(以下ヤエマル)の産卵で使用済みのマットを混ぜたものを作成する予定。 続きを表示1月22日 アリストからペアが到着した。同時購入予定だったラテラリスノコギリクワガタは発送直前に死亡したとの連絡を受けて残念だったが死着や飼育開始直後に死亡することを考えれば不幸中の幸いである。ただまだ在庫があったので代品を用意していただくなど融通を期待したいところではあったが... 天然物はメリットが多いが寿命が分からないという点が唯一のデメリットなので、本種も当たり外れかは運だと思う。 撮影後、予定した通りのマットを作成、♀をコバエシャッター大に投入した。 ♀はケースに入れてから数時間そのままじっとしていたので心配になったが、触角は敏感に動かしていたので問題ないと思う。♂はやはり気が荒くコンディションは良いようだ。今回も天然物なのでペアリング時の♀殺しは避けたいので、♀単独で産卵させたい。 マットの割合としては以下の通り。 ・カブト1番:6割 ・ヤエマル使用済みマット:2割 ・赤枯れマット:1割 ・Nマット:1割 連日、夜になると♀が活発に歩き回り、決まって照明側の蓋の角によじ登り、外に出ようとしている。触角も素早く揺らすなどツヤクワガタ特有の強い生命力が感じられた。ただ、元気なのはいいが産む気がないのが不安なところ。 昨晩まではケースから何とかして出ようと動き回っていたが、今日は夜になってもマット中に潜っており、ケース側面から見える時もあり眠っているわけでもなさそうなので産卵する気になってくれたのかもしれない。 ♀は産卵用ケースに入れて数日は落ち着きがなく、脱出しようとよじ登ってばかりいたが、ここ数日は落ち着いており、マット上にいる時間も短くなっている。来週末にでも産卵確認しようと思う。 夜10時半頃、雌雄共に活動していたので、♂を産卵用ケースに入れて様子を見ることにした。すると♀が♂に近づき、♂の下に入って♂もそのまますんなりと交尾に至った。しばらく息をひそめて見守っていたが、合体したことを確認した上で交尾の写真を撮影していると近づき過ぎたのか完了したのか♂が♀から離れた。だが、♀はその直後に白く細長い精包を排出するのを確認できた。交尾直後の精包の排出はマルバネクワガタの仲間でよく見られるが、調べてみると前に交尾した♂の精包らしい。これで今回の交尾後、この♂の精子が使われることになる。 ツヤクワガタのペアリングは種類によって危険度は異なるが、カステルナウツヤクワガタで交尾拒否した♀に逆ギレして♀殺しという痛い目を見ているので非常にビクビクものだったが、今回は♀が交尾を要求しているようだったので、♀を自然な状態のまま♂を入れたのが良かったのかもしれない。 産卵セットから3週間経ったので採卵することにした。♀はマット上で休んでいた。 マットから23個の卵が得られた。産卵しているのか不安だったので、予想以上の成果だった。卵はマット上層部にも1個あったが、大半はマット中層から下層にかけてバラ撒くように見つかった。 得られた卵は同じマットを使用して3つのプリンカップ特大に8個,8個,7個で管理することにした。 産卵ケースはマットが減った分をツヤクワガタ類の産卵に使用した使用済みマットで補充して再セットした。更なる産卵を期待したい。 卵の状態を確認したところ、23個中、4個はカビるか潰れるように死滅していたが、残りの卵は問題なさそうだった。死滅する割合は大体スチーブンスと同じ位で今のところ想定内。 深夜23時頃卵を確認したところ、1個が孵化していた。他の卵については採卵時小さかった卵についてはかなり死滅しているようだった。 前回の採卵から3週間経ったので2回目の採卵をすることにした。 結果は62個、予想を遥かに上回る産卵数だった。1日に2.8個のペースで産卵していることになる。他のツヤクワガタでも言えることだが、飼育開始直後は脱出を試みるなど環境の変化に適用するまで時間が掛かるため、3週間毎の採卵でも1回目は産卵数が少ない上に産卵直後の卵の割合が多く孵化率が悪い傾向があるようだ。 得られた卵は4個のプリンカップ特大に卵10個ずつ、2個のプリンカップ特大に卵11個ずつをセットした。プリンカップに使用したマットは産卵用のマット7割にNマット3割混ぜたものを使用した。 産卵用ケースも半減したので、カブト1番を篩にかけたものとNマットを半々に赤枯れマットを少々加えたもので補充して再セットした。 ♀はまだまだ元気な様子だった。 2/12の採卵について、単独飼育をすることにした。 3個のプリンカップ特大に卵を8個×2、7個×1でセットしたものだが、得られた1齢幼虫は17頭だった。孵化率は7割強だった。本種に限らずツヤクワガタ飼育の経験上、最初の採卵時は産み始めの割合のほうが多いため、デリケートな卵が多く孵化率はやや低いが、2回目以降は高くなる傾向がある。 ただ残念なことにプリンカップ内のマットにコバエの幼虫が多数発生していた。どこで侵入を許してしまったのかは不明だが、いきなりすべて新しいマットの変更によるリスクを避けるため、念入りにコバエの幼虫のみを取り除いたマットにツヤクワガタ用に準備しておいた以下のマットを混ぜたものを500mlクリアボトルに入れて幼虫をセットした。 ・カブト1番:4割 ・Nマット:3割 ・赤枯れマット:2割 ・ヤエマル使用済マット:1割 ♀がひっくり返った状態で死んでいた。木片で囲まれている環境なので、起き上がれなかった訳ではなく寿命と思われる。 1,2週間ほど待って最後の採卵を行いたい。 最後の採卵をすることにした。 結果は1齢幼虫12頭と孵化しそうな卵2個が得られた。ただ、これ以外に3頭の幼虫が採卵時に圧が掛かり潰してしまった。 1齢幼虫も孵化したばかりのものも複数見られ、採卵のタイミングが遅れた感がある。孵化直後の幼虫は非常にデリケートなため、待ったほうが安心とは一概に言えないので注意したほうがいい。 死亡した個体も含めると産卵数は102個となり、好結果となった。 得られた幼虫は500mlクリアボトルで単独飼育、産卵に使用したマット主体にUマットを混ぜたものを使用した。 余ったマットについてもコバエや線虫の発生が見られないため、今後の本種の幼虫飼育時に使用する予定。 昨日採卵した2個のうち、1個が孵化した。 最後の卵が孵化した。 今日は3/6採卵分のプリンカップ6個すべてを開けて単独飼育することにした。 幼虫はすべて1齢で、結果は各プリンカップに対し、以下となった。 1個目(10個)・・・5頭 2個目(10個)・・・10頭 3個目(10個)・・・9頭 4個目(10個)・・・8頭 5個目(11個)・・・9頭 6個目(11個)・・・9頭 合計すると卵62個に対し、得られた1齢幼虫は50頭となり、孵化率は約81%となった。 飼育開始時からのすべての卵から合計すると、87個採卵、うち69頭が得られ、孵化率は約79%であった。ただし、採卵時に幼虫も得られているので、実際にはもう少し高いかもしれない。 得られた1齢幼虫は500mlクリアボトルで単独飼育、マットはプリンカップ単位で多少種類を変えてみた。今回はリーフの「XLマット クワガタ用」(以下XLマット)も使ってみた。産卵用ケースに使用した余ったマットも混ぜて使用した。 本種の幼虫は成長が遅いようで、最初にセットした幼虫もまだ1齢幼虫だった。マット中にいるというより、トンネルの中で過ごす感じで観察用に縦穴を埋めずにいた幼虫では隠れようともせず側面の壁を固める程度であった。 3/13に幼虫をセットしたクリアボトル17本についてマットを加水した。外からは生存確認はほとんどできなかったが、個体No.5のクリアボトルの側面から大きな坑道が見え、奥には大きく成長した2齢と思われる幼虫が確認できた。 幼虫の入っている500mlクリアボトルを確認したところ、3齢幼虫になっているものも数頭確認できた。1個のクリアボトルにコバエが大発生していたのに気づかず、蓋を開けて悲惨な目にあってしまった。幼虫は2齢幼虫になっており、元気だった。マットは全交換になるため、スティーブンスツヤクワガタの幼虫飼育に使った使用済みマットを主体にXLマットも混ぜたものを使用した。 最初の3/13に飼育を開始し、外から3齢幼虫が確認できた5頭とまだ食痕が目立たない1頭の合計6頭についてクリアボトルのサイズを500ml→1500mlに変更することにした。 3/13に飼育開始した分で昨日マット交換した2齢幼虫以外の10本は食痕が確認できないか少ないため見送ったが、食痕が確認できない分については死滅している可能性もある。 3齢幼虫はまだ初期でこの段階では雌雄判別もできなさそうだった。食痕が目立たないがトンネルが確認できるボトルの幼虫は2齢幼虫だった。マットはXLマット、カブト1番、ツヤクワ系幼虫使用済みマットを混ぜたものにNマットも少々加えた比較的栄養価の高いマットを使用、大型化を目指したい。 4/2に最後の採卵をした2個(4/3と4/4に孵化を確認済み)についても確認したところ、2頭共に2齢初期の幼虫になっていた。少々採取が遅れた感があるが、430ccのプリンカップで2頭なので過密にならずゆったりと飼育できていたようだ。この2頭については500mlクリアボトルで単独飼育することにした。 これで単独飼育中の幼虫は81頭となった。 食痕が目立たないクリアボトルについても、セットから2ヵ月以上経過しているため、確認も兼ねてボトル交換をすることにした。 と言っても他のツヤクワも飼育しているのでスペースやクリアボトルの在庫状況も考えて、今回は3/13にセットしたうちの7本について実施した。 幼虫は6頭が3齢幼虫(うち♀斑があるのは1頭のみ)、残り1頭は2齢幼虫だった。 3齢幼虫のうち、頭部が大きく大型化が見込めそうな1頭がいたので、2300mlクリアボトルで単独飼育にすることにした。2齢幼虫と♀の3齢幼虫、♀斑はないが♀っぽい3齢幼虫の3頭については800mlクリアボトルに、残り3頭は1500mlクリアボトルでいずれも単独飼育にすることにした。 本種の幼虫は他のツヤクワに比べ頭部が色白で弱々しい印象を受けたが、今のところ1齢幼虫でセットしたボトルでの死亡例がなく、かなり丈夫なようだ。 3/13にセットした残り4つのクリアボトルについても、ボトル交換をすることにした。 4つとも♀斑の確認できない3齢幼虫が出てきた。そのうち頭部が大きく大型化が見込めそうな1頭を2300mlクリアボトルに、残りは1500mlクリアボトルで単独飼育することにした。これで1500ml以上の大型クリアボトルで単独飼育している幼虫は17頭となった。 3/6に1齢幼虫を500mlクリアボトルにセットしたうちの5頭について、マット交換を兼ねたクリアボトルのサイズアップをすることにした。 この5頭は特大サイズのプリンカップに卵を10個セットして、5頭しか孵化しなかった幼虫たちである。 確認してみると、4頭3齢幼虫になっていて、1頭はセットした場所で1か2齢幼虫の状態で真っ黒になって死んでいた。 3齢幼虫はまだ透明感のある初期の段階だったが元気で1頭は微かに♀斑がみられた。頭部の大きさから♂らしき幼虫は2頭ありうち1頭を2300mlのクリアボトルにセット、他はすべて1500mlクリアボトルにセットした。 マットはリーフの「昆虫マット B5 クワガタ用発酵マット 無添加 微粒子 完熟 ハイグレード」(以下無Hマット)というものを初めて使用した。 無HマットとXLマット、ツヤクワ系に使用したマット+既存のマットを混ぜたものを使用した。 今回の幼虫たちはXLマットとNマット主体で飼育したが、1頭死亡したものの4頭は問題なく成長しているので、特に問題はなさそうだった。ショップによって販売するマットが異なるため、できるだけ使用可能なマットについてはデータを取っておきたい。 残り19本についてクリアボトルのサイズアップをすることにした。 今回は死亡率が非常に高く、10頭が死亡または死滅していた。500mlで管理していた期間が3ヵ月近くと長かったことと乾燥がやや進んでいたこと、30℃近く上がった日が多かったことなどが原因かもしれないが、前半の個体群がカブト1番主体に対し、後半の個体群はXLマットを使用していた違いもあり、マットの違いの可能性もあるかもしれない。 幼虫は3齢幼虫が7頭、2齢幼虫が2頭だった。1頭大きい幼虫がいたので、2300mlクリアボトルに、他は大きさに合わせて1500mlと800mlクリアボトルにそれぞれセットした。 マットは既存のマットに本種の産卵用に使用したマットにUマットを少々混ぜたものを使用した。 3齢幼虫でマット上で死亡する個体が多く出ていた。ただ、高い場所に置いているボトルが中心のようで、目の高さに置いているボトルに関してはマットの底面付近にいて暴れることもなく、成長しているようだった。 マットではなく、高温に弱い傾向があるのかもしれない。 3齢で死ぬ個体が多いため放置に徹しているが、800mlクリアボトルで飼育している♀の幼虫がマット上にずっといるため、マットが粉末状となって栄養価が足りてないのと乾燥も進んでいるように見えたので、既存のマットにUマットを多少加えたもので加水してみた。 ツヤクワガタの中でも本種は特段幼虫飼育の難易度が高いように感じるので、今回の飼育で少しでもデータを集めたいと思う。 |