ヤエヤママルバネクワガタ | |
学名:Neolucanus insulicola insulicola | |
長歯型の♂59mm(2019.9.14 西表島産) |
Data | |||||||||||||||
和名 | ヤエヤママルバネクワガタ 別名(愛称):ヤエマル |
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体長 | ♂:35〜67.6mm ♀:33〜45mm |
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分布 | 石垣島,西表島 | ||||||||||||||
出現期 | 10〜11月 | ||||||||||||||
餌 | なし(飼育下では昆虫ゼリーを食べる) 幼虫はシイ類,カシ類,リュウキュウマツの赤腐れしたフレークを食べる。 |
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寿命 | 約2ヶ月 | ||||||||||||||
飼育難易度 | 簡単 ★★★☆☆ 困難 | ||||||||||||||
解説 | 八重山諸島に生息するマルバネクワガタの一種。 大型のクワガタで大アゴは太く短いが、大アゴを除けばオオクワガタよりも大きいとされる。 体色は暗褐色で光沢がある。 与那国島には別亜種ヨナグニマルバネクワガタ(Neolucanus insulicola donan)がいるが、大アゴの形状に違いが見られ、特に基部近くの上向きの突起が本種では外寄りにあるのに対し、ヨナグニマルバネクワガタでは中央付近に位置している。 成虫は10月下旬から11月下旬まで発生し、後半は産卵場所を求めてか歩行する個体が多いという。 自然環境での幼虫期間は長く、4〜5年と推測されているが、飼育下では2年で羽化している。
幼虫は2018年8月25日にペットショップで見つけて衝動買いしたもの。飼育記録については以下に飼育メモとして記載していきたい。 |
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飼育メモ |
2018年8月25日 ペットショップでたまたま本種の3齢幼虫が販売されていたので4頭を衝動買いしてしまった。産地は石垣島と西表島があったが西表島のものを購入した。1Lガラス瓶にUマットで飼育を開始した。 続きを表示11月4日 マットの状況に合わせて5〜7割程度交換、白い菌糸が見える瓶は状態が良いとみなしそのまま飼育続行とした。 1頭が蛹室を作成した。 4頭とも蛹室を作成し、既に前蛹となっていたが、1頭が蛹化した。 深夜2時前くらいに確認したところ、2頭目が蛹化していた。 3頭目が蛹化していた。 最後の4頭目が蛹化していた。 1頭目が羽化した。蛹化から25日間で羽化したことになる。ガラス面の蛹室の小さな窓から辛うじて赤い上翅の一部が見れたことで羽化したことが分かった。 2頭目が羽化した。 蛹も見てみたいため、次に羽化すると思われる蛹の蛹室上部を壊してみた。瓶の外から見る限り大きそうだったのだが♀であった。 19時頃、3頭目が羽化していた。まだ上翅は黄白色だったが、22時には鮮やかなオレンジ色になっていた。 4頭目が羽化した。蛹室の窓が小さいため後翅の一部が見える程度で状況が分かりにくい。 最初に羽化した個体は羽化から16日が経過しているのでそろそろ出してみることにした。ビンから塊になっている蛹室ごと取り出し、割ってみると長歯型と呼べる見事な大アゴを持った大型の♂が出てきた。以前は基亜種がタテヅノマルバネクワガタと呼ばれているだけのことはある立派な縦角が確認できた。 取り出した♂はミニプラケースに移し活動するまで休ませることにした。 2頭目に羽化した個体の蛹室の一部を壊して♀を確認した。これで雌雄が不明なのは残り1匹になった。最後の1匹が♂であれば2ペアが揃い言うことなしなのだが。 ペアが得られたことで改めて撮影しようとよく行く近所の林道に行ってスダジイをバックに撮影したが、一週間前の台風の影響が想像以上に酷く、至るところに倒木があり、潜ったり跨いだりして進むも倒木の枝が酷くて進めない場所も多く、またある程度進んでしまうと引き返す気力もなくなってしまい大変な労力を要したが藪の中を迂回などして何とか出ることができた。羽化からある程度日数が経過しているとはいえ、脱出するまでの振動がダメージを与えていないか気掛かりだ。 最後の4頭目の蛹室を開けてみた。残念なことに上翅に皺が寄った♀であった。ただ後翅は仕舞われており羽化不全とまではいっていないので繁殖に問題はなさそうである。 ただ、これで♂は1匹のみであることが分かったので繁殖には最初の♀2匹を優先させる予定。 まだ活動は開始していないが、産卵用ケースをセットすることにした。ケースはコバエシャッター大を使用。マットはケース7分目程度入れ、下3分の1程度にNマット、上3分の2はNマットとUマットのブレンド、マット上に近所で取ってきた赤腐れの恐らくアカマツと思われる朽木を崩したものを撒いてみた。 ♂1匹と♀2匹を入れて様子を見ることにした。体長は♂59mm、♀は2匹共に49mmだった。エサは特に食べないとされるが水分補給は必要なため、ゼリーも舐める可能性があるのでプロゼリーも入れてみることにした。 カビが生えていたゼリーのカビが無くなっており明らかに食べた痕跡が見られた。 10/20に再び西表島に行き、2日目の夜に森林を歩き回り、リュウキュウイノシシに遭遇するという恐怖に見舞われたがヤエマル求めて更に奥地に潜入、急斜面に生えていたスダジイの洞の入り口に頭を少し入れていた小型の♂を発見し、洞に入ってしまわないかとドキドキしながらよじ登ってなんとか採集することができた。帰り道に遠くの枯れかけた細いリュウキュウマツと思われる木のやや高い位置に止まっていた小型の♂を発見した。発見時は肉眼ではサキシマヒラタの♀だろうと期待していなかったのだが一眼レフを望遠鏡代わりに使ったところ本種であることが分かり無我夢中で採集した。残念ながら今回も♀を見つけることはできなかった。♀を求めて♂が歩くために比較的♂は見つけやすいようである。しかし、これで飼育中の個体と合わせて3ペアになり、血の入れ替えをすることで長期累代も期待できるかもしれない。 飼育中の大型♂と♀がゼリーを舐めているところが観察できた。 産卵ケースにいる大型♂を採集してきた小型♂と交換した。 夜、産卵ケースにいれた小型♂が交尾していた。 産卵ケースのマットを開けたところ、卵は1個見つけるに留まった。ただ、その間洗面器に入れておいた長歯の♂が交尾した。案外簡単に交尾することが分かり、残りの2匹の♀と自己採集の♂ともそれぞれ交尾させることができた。何か分からないが交尾直後に♀から細長い白い物質を排出するのが観察できた。 産卵に専念できるよう産卵ケースをもう1ケースセットした。♀も3匹ともマット上にいて産卵に専念している様子はなかったのでこれからに期待したい。 ♂同氏の喧嘩を防ぐために1匹だけクロハナムグリのケースに入れていた個体が死亡していた。ケースが狭いのとやや乾燥気味だったので環境が悪かったようだ。 産卵状況が気になったため、最初にセットしたケースのマットを調べたところ、卵が1個も見つからなかった。 2つめのケースも調べたところ、マットのかなり上層から卵が続々と出てきて10個も採ることができた。まだまだ採れそうだったが孵化率が下がるといけないので採取した10個は大きめのプリンカップで同じマットで管理、産卵ケースは元に戻して♀1匹だけ卵が得られなかったケースの♀と交換した。 卵は大型種の卵とは思えない程小さめでほぼ球体に近い形状をしていた。また、11/4に得られた卵は大きく成長しており、孵化が期待できそうである。 朝、最初に採取した卵が孵化していた。まだ小さいうちに採取したので心配だったが孵化率は高そうだ。→孵化率は悪く、採卵後1週間程でプリンカップ側面から確認できる卵(確か7,8個)が3個だけになってしまった。 大型の♂が死んでおり、皿木の下には最初に羽化した♀が死んでいた。 11月17日に採った卵のうち、2個の卵が孵化した。残り1個も幼虫が透けて見えている。 1個孵化。これで4頭になった。最初の1頭はかなり長い期間同じ場所でゆっくりマットを食べている様子だったが最近になってようやく見えなくなった。他の幼虫は数日で見えなくなった。環境の変化にはかなりデリケートであることが考えられるのでしばらくはそっとしておくつもりだ。 9月1日に羽化した♀が死んでいた。卵が得られなかったケースではあるが死骸のそばに小さいムカデがいたので影響が心配だ。小型の♂も動きがスローになっており、そろそろ寿命のようだ。♀は長い期間見ていないのでマットの中で既に死んでいるかもしれない。 産卵しているとしても既に成長して採卵しても安全と判断し、ケースを開けてみた。まず小型の♂は死ぬ寸前で触角と脚が少し動く程度だった。♀は以前行方不明で恐らくマットの中で死んでいると思われる。 前回卵が得られなかったケースは♀を交換しているにも関わらず卵は得られなかった。マットに原因があるのかもしれない。成績が良かった2つめのケースでは今回も少し掘り起こしただけで幼虫が透けて見えるほど成長した卵10個と1齢幼虫が9頭得られた。もっといるはずだが安全策を取り残りはそのままケース内で成長させることにした。先にプリンカップで孵化した幼虫で気付いてはいたが成長が始まっても幼虫の頭部はかなり白っぽいままなのが特徴的であった。 幼虫は1頭ずつプリンカップで管理、卵はプリンカップに6個と4個に分けて管理した。 幼虫を管理しているプリンカップのマットが大分劣化してきたので、マット交換することにした。 まず、11月17日に採卵したプリンカップを開けてみたところ、1頭も見当たらなかった。1頭の孵化は確認していたが多数の卵が消失したカップだったため、衛生的によくなかったのかもしれない。 次に1番最初に採卵し孵化させた1頭の幼虫を管理しているプリンカップを開けたみたところ、2齢幼虫に成長していた(写真の個体)。ここまで成長するとさほどマットに気を使う必要はないかと思うので、Uマットを主体に交換前のマットも少しブレンドしたマットにし、プリンカップも従来と同様のSサイズで飼育続行することにした。 全滅したプリンカップがあったことで心配になり、卵6個を管理しているプリンカップも開けてみたところ、1齢幼虫2頭、2齢幼虫3頭が出てきた。思ったより生存率は高くて安心した。恐らく採卵するタイミングが早すぎると孵化率が下がるのではないかと思う。得られた5頭についても同様にプリンカップでそれぞれ単独飼育することにした。 2齢幼虫は頭部も鮮明な橙色になっており、大アゴも太くて湾曲しマルバネらしくなっていた。1齢幼虫も成長したことで筋肉が目立ち、白かった頭部も色付いており、最初の印象から大分変っていた。 種親のケースの状態も気になりマットを少し穿ったところ、1齢幼虫と2齢幼虫を1頭ずつ確認することができた。マットの状態も良かったため、気持ちUマットを足してそのまま飼育続行することにした。 プリンカップ内の幼虫が3齢幼虫になって窮屈そうに見えた1頭について1Lガラスビンに移動させた。マットも残り少ないので買い足しに行かなければならないが虫撮影が忙しくなかなか時間が取れない。 放置していた産卵用ケースにいる幼虫たちも皆3齢幼虫になっているようでかなり窮屈そうだったので少し掘り返して出てきた6頭について坊主だったもう1つの産卵用ケースに移した。マットも少し付け足した。 最近夜中にゴソゴソと音がするので何だろうと思っていたが、多頭飼育していたプラケースのマット上に成虫がいることに気付いた。正直こんなに早いとは思っていなかった。複数による喧嘩を防ぐためミニプラケースに単独で管理することにした。 多頭飼育しているケースと単独飼育しているビンから既に羽化して土繭から出ている成虫を探したところ、10/7採取した個体も含め10匹(♂7匹、♀3匹)が得られた。まだ土繭もゴロゴロしている状態で、飼育ケースの確保を急ぐ羽目に。 大きさは♂では最小で52.5mm(多頭飼育個体)、最大で59mm(単独飼育個体)だった。1年以上放置していたのが良かったのか悪かったのかは分からないが、まずまずの結果になった。 ダラダラと書き綴ってきたが、ここでの記録はそろそろまとめて終わりにしたい。 10月7日〜10月21日にかけて成虫が出てきて27匹(♂12匹、♀15匹)が得られた。最初は♂ばかり出てきたので偏ってしまったと焦って♂単品でヤフオクに出してしまったが、後半は逆に♀ばかり出てきて結果として♀のほうが多かった。雌雄で活動時期のタイムラグがあるようだ。 飼い切れないのでヤフオクでさばいたがやはり大型の♂は単品でも人気があってどんどん落札していただけた。今後の種親は写真の大型の♂60mmと小型の♂47.5mmを使用して余った♀たちで再度繁殖させる予定である。 現時点で3回の交尾に成功しており♀3匹を1匹ずつ産卵用ケースにセット済である。 今後の飼育経過はこちら。ツイッターの虫ナビ公式アカウント(食の安全bot@mushinavi)でも発信していくかもしれない。 X(Twitter)でお試し販売中です。よろしくお願いします。 |
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関連リンク | ヤエヤママルバネクワガタ飼育記録 |