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コカブトムシ
学名:Eophileurus chinensis chinensis

夜間、シイ類の洞の周囲を歩いていた♂(2019.7.14 対馬)
Data
和名 コカブトムシ
体長 18〜26mm
分布 北海道,本州,飛島,佐渡島,隠岐諸島(島後,西ノ島),伊豆諸島,四国,九州,壱岐,対馬,屋久島,トカラ列島(口之島,中之島,平島)
出現期 4〜9月
虫や生物の死骸を食べる肉食性
 幼虫は腐食の進んだ朽木を食べる
解説 日本に生息するカブトムシの一種。
角が発達しない小さなカブトムシで、樹液には集まらず死肉を食べるなどカブトムシとは思えない習性をしている。
体色は光沢のある黒色。♂は前胸背板の中央に大きな円形の窪みがあり、頭部には小さな角状突起がある。
♀では前胸背板の窪みは縦長で目立たない。角状突起は円錐状で痕跡程度。
普段は朽木内や洞の中の土中などに棲息しており、他の昆虫類の死骸や幼虫を食べて生活している。
 
日本に生息するEophileurus属の仲間は以下の3亜種。
亜種名/学名 分布
コカブトムシ
Eophileurus c. chinensis
北海道,本州,飛島,佐渡島,隠岐諸島(島後,西ノ島),伊豆諸島,四国,九州,壱岐,対馬,屋久島,トカラ列島(口之島,中之島,平島)
(アマミコカブトムシ)
Eophileurus c. irregularis
奄美大島
(オキナワコカブトムシ)
Eophileurus c. okinawanus
沖縄諸島,八重山諸島
 
トップの写真は2019年7月14日の夜、対馬の森林内のシイ類の洞の周りを歩いていた♂を撮影したもの。
2017年の写真は5月21日の夜1時前、神奈川県南部の標高100m付近の林内に設置したライトトラップに飛来した♂を撮影したもの。今回のライトトラップで初めて本種を見ることができた。最初は前日の21時頃に♀が飛来し、ペアで見ることができた。材割りでもしない限り、なかなか目にしない種なので飼育することにした。
飼育メモ 2017年5月21日
ライトトラップに飛来したペアを持ち帰り、ミニプラケースに数年前に購入してそのまま使わなかったクワガタ飼育用のマットをセットした。餌は肉食性なので現地で採集したクチキコオロギの幼虫を潰して入れてみた。
 
5月22日
クチキコオロギは食していないようだったので、猫の餌であるモンプチピューレKISSを購入、ペットボトルの蓋にティッシュで底上げしてから入れてみた。
 
5月23日
モンプチピューレKISSを食べた跡が見られた。
 
6月6日
モンプチピューレKISSが大好物なようで夜セットしたものが朝には無くなっていることが多くなった。ただ、警戒心が強く、餌を食べていても近づくだけですぐに潜ってしまうのであまり飼育している実感がない。
クワガタ用マットとはいえ、黒く劣化が進んでいる為、きのこMatなるものを購入し、ケースもミニプラケースから中プラケースに移すことにした。ミニプラケースのマットを出してみると既に卵が出てきて合計21個も発見することができた。採取した卵は2個のプリンカップに産卵に使用したマットと共にセットした。
黒く劣化しているマットは粘土のように塊になりやすく産卵し易かったのかもしれないが、きのこMatは比較的木目がやや粗くパサパサした感じで塊になりにくいようだったのでケース底部のみ劣化したマットをブレンドして固めに詰めた。
続きを表示 6月11日
2個のプリンカップにセットした卵が日中にそれぞれ1頭ずつ孵化した。活動を開始したら他の卵を食べられてしまう危険もあるが、共食い傾向のある本種は単独飼育が基本なので手間が掛かるのと、そんなに増やしても仕方がないのでしばらくは様子を見ることにする。夜に3頭目が孵化した。
 
6月13日
大分孵化したようなので1頭ずつプリンカップで単独飼育することにした。プリンカップのマットを取り出したところ、10頭の幼虫と卵10個、孵化中と思われる1個の歪に伸びた卵が出てきた。今のところ死滅した卵はないようだ。
 
6月14日
孵化中と思われる卵も朝見たら孵化していた。
 
6月16日
昨日新たに1頭孵化した。6月14日に孵化した幼虫は小さく、昨日孵化した幼虫などに比べても小さく貧弱で死んだように動かない。外からケース越しに突いてみると脚だけは辛うじて動かす程度である。孵化中の段階で卵自体も小さく、細長く歪な状態が長かったので違和感を覚えていたが、卵の栄養が少なく生きられないようだ。
成虫は相変わらず姿を見せないが夜間餌を平らげている。
 
6月26日
成虫の飼育ケースの底面を見たところ複数の幼虫が確認できた。飼育中の幼虫は既に3齢幼虫になっている → 後に調べたところ、13頭中11頭が3齢幼虫、1頭は2齢幼虫、1頭は跡形もなく死滅していた。
 
6月27日
朝、成虫がペアでモンプチピューレを食べているところが観察できた。
成虫の飼育ケースのマットを開けたところ、卵23個、1齢幼虫2頭、2齢幼虫9頭出てきた。前回孵化待ちだった卵は3頭孵化して2齢幼虫になっており、残りの卵は死滅したようだ。
幼虫は合計24頭になった。最初に孵化した幼虫は3齢幼虫にまで成長し、プリンカップでは窮屈そうなので3頭のみコーヒー瓶やジャム瓶に移した。3齢幼虫はまだ大きさは2齢幼虫と大差ないが、頭部と気門は明確に大きい。残りの3齢幼虫の飼育用に飼育ビンを用意する必要がありそうだ。
成虫の食欲が旺盛なので、餌のモンプチピューレと同じ価格で容量が多い「チャオちゅ〜る(とりささみ)」を購入した。
 
7月1日
まだ小さいプリンカップで飼育している3齢幼虫を500mlビン2個と残りはプリンカップ大でそれぞれ単独飼育することにした。10頭いるはずだったが1頭は早いうちに死んだらしく跡形もなく死滅、1頭はまだ2齢幼虫だった。プリンカップ大は少々大き過ぎるが手元にある容器で他に適したものがない為使用することにした。
 
7月14日
大きめのビンとプリンカップ大に入れた幼虫の内、2匹が蛹になっていた。他にも外から蛹室が見えるビンやプリンカップも見られた。
 
7月19日
蛹化ラッシュが続いており、小さめのプリンカップでも続々と蛹になっていた。終末にも全身の蛹を撮影する為、取り出してみたい。
 
7月22日
6月27日に採取した卵27個を入れていたプリンカップ大には孵化した幼虫が成長して既に3齢幼虫となり過密になっていたので取り出したところ、7匹の3齢幼虫と1匹の2齢幼虫が出てきた。孵化できなかった卵や取り出しが遅れたことで共食いも発生したのかもしれない。しかしこれ以上の数を飼うのは困難だ。
飼育中の幼虫の過半数は蛹になっており、プリンカップ内の蓋付近で蛹室を作ったものは取り出しやすいため、取り出して蛹を撮影した。蛹室の上部だけ壊すことで取り出し後も蛹室として再利用できた。蛹室はカブトムシのような縦長ではなく、やや斜めの横長に作られていた。蛹は前胸背の左右が角のように前方に張り出しているのが印象的だった。
 
7月23日
プリンカップ大で昨日まで蛹だった個体が羽化していた。外から見える範囲ではこの個体が一番先に羽化した。採卵から47日で羽化したことになる。サイズに適したケースがなかったとはいえ、マットをあまり食すこともなく蛹化した様子で大きいサイズのプリンカップは効率が悪かった。取り出してみると♂でまだ赤かった。
 
7月30日
2日前から新成虫が活動を開始し、プリンカップをガリガリして脱出しようとしていたので、前回幼虫をセットしたものを除き、飼育中のプリンカップやビン22個を開けてみることにした。ほとんど羽化しており、19匹の新成虫が得られた。だが♂の割合が明らかに多く♂13匹、♀6匹と♀の二倍以上も多かった。
他はまだ蛹が1匹、死んだ蛹(取り出し時に傷付けてしまった可能性も)1匹、消失した幼虫が1匹だった。消失した幼虫が入っていた小さなプリンカップは1齢幼虫を投入後、まったくマットに変化がなく地衣類などで覆われるのみとなっていたので早いうちに死んでいることは分かっていた。
新成虫は小さなプリンカップだけで羽化したものもその何倍もある大きなプリンカップで飼育したものも体長に大差はなかった。種親のケースのマットにも多数の幼虫が湧いていたがビンやマットが追いつかず放置していたが、今回の取り出しでプリンカップやビンが大分空いたので取り出してみることにした。幼虫は2〜3齢幼虫が26匹、1齢幼虫1匹、卵2個が出てきた。他に体の一部を齧られて死んでいた3齢幼虫も出てきた。再びプリンカップやビンをすべて使い、マットも使い回しした上で残りのマットもすべて使い切ってしまった。幼虫は大きさも様々だったが既に3齢幼虫後期と思われる大きく成長したものも複数みられた。比較の為に10円玉と撮影しているが今回は明らかに10円玉よりも大きくなっていた。
種親はまったく衰えている様子はなく、飛ぼうとさえするほど元気だった。取り出した新成虫たちはまだ羽化直後で上翅がオレンジ色の新成虫1匹を除き中プラケースで一緒に管理することにした。飼うのは大変なので採集場所に放すことも考えている。
新成虫のケースに「チャオちゅ〜る」を入れたところ、早速夜には♂2匹が後食していた。モンプチピューレのような強烈な匂いはないものの食いは同様に良い。
 
8月16日
新成虫取り出し時以来、3匹羽化しているがいずれも♂であった。餌に使っているチャオちゅ〜るもあっという間になくなってしまうので、代替可能な餌としてカメやイモリの餌として販売されている乾燥イトミミズが余っていたので与えてみたところ、匂いで分かるようで日中なのに次々とマットから出てきて凄まじい食欲で押し合いながら食べていた。
 
8月20日
新成虫のあまりの食欲に餌やりが追いつかず3匹ほど死にだした。いよいよ逃がすことも検討したい。♂に偏っていることが気になっていたが昨日から新たに5匹も連続で♀ばかりが飼育ビンのマット上に出てきていた。
 
8月26日
昨日から今朝にかけて幼虫のビンやプリンカップから新たな新成虫が這い出してガリガリと音を立てていたので取り出してみたところ、♂2匹、♀3匹で合計すると♂15匹、♀14匹と♀が盛り返してきた。一応餌は切らしながらも与えているが、死骸も食べてしまうので実際何匹死んだかも分からない。種親は元気がなくなってきたものの未だ健在である。
 
9月6日
餌不足解消にネコ用ドライフード「銀のスプーン 三ツ星グルメ」を8月30日から与えている。ドライフードなので湿らせて与えているが、チャオちゅ〜るや乾燥イトミミズより若干食いが悪いようだが、食べてくれている。
毎日のように夜間、ビンやプリンカップから新成虫が這い出してきてガリガリ音を立てるので流石にうっとうしくなってきた。ドライフードのせいかケース内が臭くなっている。
前回から新たに♂10匹、♀9匹が得られ、合計すると♂25匹、♀24匹になった。
 
9月21日
前回から新たに♀2匹が出てきたのを最後に一通りピークは過ぎていたが、7月30日に卵を2個採って小さなジャム瓶にいれたままにしておいたところ、今日成虫ペアとなって這い出していた。ジャム瓶の中でも小さなサイズに2匹だと共食いの危険があったはずだが、興味深い結果となった。
これで今までで得られた新成虫は♂26匹、♀27匹と以前は♂の半分だった♀が追い越してしまった。
 
9月22日
ドライフードのせいか新成虫のケースがあまりに臭いのでマットの上層を捨てて幼虫飼育に使ったマットを補充してようやくおさまった。
 
10月7日
種親のケースに新成虫も出てきた。種親は流石にゼンマイの切れかかったオモチャのようにスローな動きになっている。
PHOTO

夜間、シイ類の洞の周囲を歩いていた♂@
(2019.7.14 対馬)

夜間、シイ類の洞の周囲を歩いていた♂A
(2019.7.14 対馬)

ライトトラップに飛来した♂@
(2017.5.21)

ライトトラップに飛来した♂A
(2017.5.21)

ライトトラップに飛来した♂B
頭部の角が確認できる。
(2017.5.21)

ライトトラップに飛来した♀@
(2017.5.20)

ライトトラップに飛来した♀A
(2017.5.20)

ライトトラップに飛来した♀B
(2017.5.20)

ライトトラップに飛来した♀C
(2017.5.20)

飼育開始時のミニプラケース
(2017.5.26)

最初に出てきた卵
(2017.6.6)

卵@
ミニプラケースのマットから21個の卵が得られた。
(2017.6.6)

卵A
(2017.6.6)

プリンカップにセットした卵
(2017.6.6)

プリンカップで孵化させた1齢幼虫@
(2017.6.11)

プリンカップで孵化させた1齢幼虫A
(2017.6.11)

プリンカップから取り出した1齢幼虫@
(2017.6.13)

プリンカップから取り出した1齢幼虫A
(2017.6.13)

プリンカップから取り出した1齢幼虫B
(2017.6.13)

1齢幼虫が入ったプリンカップ
(2017.6.13)

2齢幼虫@
成虫のケースから出てきた。
(2017.6.27)

2齢幼虫A
(2017.6.27)

2齢幼虫B
(2017.6.27)

3齢幼虫@
2齢幼虫後期と大差ないが頭部と気門が大きいことが分かる。
(2017.6.27)

3齢幼虫A
(2017.6.27)

3齢幼虫B
新たに種親のケースから出てきた3齢幼虫。
(2017.7.30)

3齢幼虫C
新たに種親のケースから出てきた3齢幼虫。
(2017.7.30)

3齢幼虫C
新たに種親のケースから出てきた3齢幼虫。既に後期と思われる。
(2017.7.30)

幼虫飼育の様子
コカブトムシにとってプリンカップ大は大き過ぎるが今ある容器でやり繰りしている。
(2017.7.1)

プリンカップ内の蛹
(2017.7.19)

蛹室内の蛹
(2017.7.22)

蛹@
(2017.7.22)

蛹A
(2017.7.22)

蛹B
(2017.7.22)

蛹C
(2017.7.22)

蛹室内の新成虫♂
(2017.7.23)

新成虫♂@
(2017.7.23)

新成虫♂A
(2017.7.23)

新成虫♂B
(2017.7.27)

新成虫C
♂13匹、♀6匹と♂は♀の2倍以上に偏った。
(2017.7.30)

種親
既に子供が19匹羽化しているにも関わらず未だに産卵を続けている。
(2017.7.30)

新成虫の後食
(2017.7.30)

湿らせた乾燥イトミミズを食べる成虫たち@
(2017.8.16)

湿らせた乾燥イトミミズを食べる成虫たちA
(2017.8.16)
 
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