ホーム > コウチュウ目 > クワガタムシ科 > クワガタムシ亜科
 
ヒラタクワガタ
学名:Dorcus titanus pilifer

ヒラタクワガタの♂52mm(神奈川県鎌倉産/WF1)
(2008.5.17)
Data
和名 ヒラタクワガタ
体長 ♂:29〜73mm
♀:28〜41mm
分布 本州,四国,九州,種子島,屋久島,伊豆諸島(大島・利島・新島・式根島・三宅島)
出現期 5〜9月
主にクヌギ,コナラの樹液  クヌギなどの洞の中に好んで棲む。
寿命 2〜3年
飼育  産卵
材とマットに産卵。
 幼虫
やや湿度の高めのマットを好む。菌糸ビン飼育よりマット飼育の方が適している。
菌糸ビンで飼育する場合はヒラタ向けのものを使うこと。オオクワ向けの菌糸ビンでは水分量が少ないため、大きくならない。
 成虫飼育
やや気が荒いので、数日のペアリング後、♀単独飼育で産卵させると良い。
飼育難易度 簡単 ★★★☆☆ 困難
 簡単だという声もよく聞かれるが、たくさん産んだり、まったく産まなかったり、個体差によるところが大きい。
水分量をやや多目にするのがいいらしい。
解説 大型で人気のあるヒラタクワガタ。
オオクワガタDorcus hopei binodulosus)よりも喧嘩好き。
関西方面に多く棲息しているが、関東以北では比較的珍しく、横浜に住んでいた頃は憧れの的であった。
 
頭部及び胸部は密に点刻がありツヤ消し状態だが、小型個体では点刻が無くツヤが出てピカピカしている。
♀はオオクワガタの♀に似ているが、オオクワガタに見られるような明確な上翅の筋が無いので見分けられる。
 
外国には本種と同種のオオヒラタの仲間がおり、外国産クワガタの輸入解禁に伴い、飼育中のオオヒラタが野外へ逃げ出したり放虫し、本種と交配したと思われる雑種が見つかっており、本種の存続が心配されている。
 
トップの写真は、偶然見つけた♀から羽化させた♂を撮影したもの。2007年8月19日にわずかにコナラがある程度の湿地のメタセコイヤの大木の割れ目から蛇が出てきて登ろうとしてそのまま地面に落ちるとそこには本種の♀がいた。メタセコイヤは針葉樹なので通常本種は来ないが、産卵場所を探してメタセコイヤの臭いで引き寄せられたのかもしれない。大きさや筋のない上翅から本種と同定したが、地元で本種を見るのは初めてだったので、飼育ケースに入れておいたところ、ほとんどほったらかしだったが、そのまま産卵していたようで、マット中やマット上に複数の幼虫を確認した。累代するつもりはなかったのでそのままにしておいたのだが、2008年5月に大きめの♂が動いていたのを発見し、ケースを開けてみるとコメツキムシの一種が大量に発生していた。この劣悪な環境でも立派な♂が出てくるとは予想外だった。
本種は苦労しても産卵しなかったこともあり、繁殖難易度は個体によるところが大きいようだ。
♂はその後、♀の採集場所であるメタセコイヤに放してやった。♀も羽化すればまた放すつもりだが、ある出版社から1年越しの計画でカブト・クワガタ飼育関連の書籍作成・DVD出演も頼まれている為、まだ本種が出てくるようであれば紹介用に累代飼育も検討したい。
 
国産ヒラタクワガタ(titanus属)には下記の全12亜種がいる。
和名/学名 分布
ヒラタクワガタ
D.titanus pilifer
本州〜九州,種子島,屋久島,伊豆諸島
ツシマヒラタクワガタ
D.titanus castanicolor
対馬
ダイトウヒラタクワガタ
D.titanus daitoensis
大東諸島
アマミヒラタクワガタ
D.titanus elegans
奄美大島
ハチジョウヒラタクワガタ
D.titanus hachijoensis
伊豆諸島(八丈島)
ゴトウヒラタクワガタ
D.titanus karasuyamai
五島列島
オキナワヒラタクワガタ
D.titanus okinawanus
沖縄諸島
オキノエラブヒラタクワガタ
D.titanus okinoerabuensis
沖永良部島
サキシマヒラタクワガタ
D.titanus sakishimanus
八重山諸島
タカラヒラタクワガタ
D.titanus takaraensis
トカラ列島(宝島)
イキヒラタクワガタ
D.titanus tatsutai
壱岐
トクノシマヒラタクワガタ
D.titanus tokunoshimaensis
徳之島,与路島,請島
 
関連リンク  ヒラタクワガタ飼育記
 ヒラタクワガタ写真集
PHOTO

♂52mm@(神奈川県産/WILD)
ページ下の♀33mmを飼育したところ、飼育用マットからいつの間にか羽化していた。種親を採集したメタセコイヤで撮影。
(2008.5.17)

♂52mmA(神奈川県産/WILD)
そのまま逃がした。
(2008.5.17)

♂52mmB(神奈川県産/WILD)
頭部と前胸背板は密に点刻されるので、ホームページサイズに縮小した画像では潰れてしまうのが残念なところ。
(2008.5.17)

ヒラタクワガタの♂63mm(静岡県産/WF1)。

ヒラタクワガタの♂59.5mm(静岡県産/WF1)

ヒラタクワガタの♂55mm(静岡県産/WF1)
この♂を種親にして更に累代飼育をした思い入れの強い個体。

ヒラタクワガタの♂50mm(静岡県産/WF1)
普通に飼育すると野外で見られるような頭部までピカピカした小型個体は非常に出にくい。

ヒラタクワガタの♂33.5mm(静岡県産/WILD)
野外で採集した極小個体の♂。
前胸部と頭部がピカピカになる。

♀33mm(神奈川県産/WILD)
産卵場所を探していたのかコクワもいない湿地帯付近のメタセコイヤの木の根元にいた。発見時、メタセコイヤに登ろうとしている白っぽい小さなヘビがおり、滑り落ちてしまい逃げていったが、ヘビが落ちた場所を見たところ♀を発見した。
写真は家に持ち帰ってから撮影したもの。
(2007.8.19)

♀34mm(静岡県産/WF1)@
♀は光沢があり、オオクワガタの♀に似ているが、上翅のスジがほとんどない。

♀34mm(静岡県産/WF1)A


1齢幼虫

2齢幼虫

3齢幼虫@
まだ脱皮して日が浅く、体が成長していないので、頭でっかちである。

3齢幼虫A
かなり成熟した幼虫。ややクリーム色がかっている。

3齢幼虫B

3齢幼虫の頭部

蛹@

蛹A
羽化直前で表皮が透けて見える。

羽化@
まだ頭部が曲がって、上翅も白い。

羽化A
まだ大アゴや頭部に蛹の表皮が残っているが、ほぼ脱皮が完了した。

羽化B
裏返って、じっと体が固まるのを待っている。

羽化C
羽化して5日後の♂。
まだワインレッドで体が完全には固まっていない。

羽化D
羽化から15日後、ようやく体が黒く固まってきた。
 
先頭ページへ