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マメゲンゴロウ飼育記
Agabus japonicus
 
産地:神奈川県鎌倉市
 
3月になり、そろそろ「虫navi」の昆虫撮影を再開しようと、とある公園に行ったところ、浅い池に小さいゲンゴロウを1匹発見し、手で掬って採集してきました。
調べてみるとマメゲンゴロウということでした。
去年から飼育しているゲンゴロウCybister japonicus)は現在も元気にしていますが、まだ産卵には至っておらず、水生昆虫の累代飼育を難しく感じています。
しかし、本種は普通の水草に産卵するので簡単そうなので、ペアになったら、累代にも挑戦できればと思っております。
 

マメゲンゴロウ(鎌倉産/WILD)

 
 
採集
2006年3月5日
 とある公園の浅い池でマメゲンゴロウが活発に泳ぎ回っているところを発見し、手で掬って採集した。
その池にはヤマアカガエルのものと思われる卵が多数あり、コミズムシも多数泳いでいた。
 
持ち帰ったマメゲンゴロウは500mLガラスビンに田砂を敷いて、水面で呼吸するための足場として水草も入れた。
ロックポンドで見つけたアカムシを与えるとすぐに食べたが、アカムシはあまり採れなかったので、予備のエサに使えるのか分からないがミズムシも数匹与えてみた。ただ、アカムシよりも固いのと逃げやすいので、難しいかもしれない。
 
このまま1匹だけで飼育するのもかわいそうなので、今度行った時には数匹採集して累代飼育にも挑戦してみたい。
今の時期は出てきたばかりと思われるので、交尾済みなのかは分からないので、やはりもう数匹は欲しいところだ。
アカムシを食べるマメゲンゴロウ
(2006.3.5)
 
飼育ビン
小さいので、500mLガラスビンで飼育することにした。
(2006.3.5)
 
飼育状況
3月6日
 昨日セットした500mLガラスビンにはエサとしてアカムシとミズムシを入れていたが、ミズムシにはまったく興味を示さず、生きたものではエサとはならないようだ。
夕食がたまたま刺身だったので、少し与えてみると、しばらくして沈んだ刺身を探し当て、少し食べては息が持たないので、水面に上がってはまたさっき食べていた刺身を探し回るといった行動を繰り返していた。しばらくすると刺身を掴んだまま水面で呼吸しながらじっくり食べるようになった。
しかし、とにかく動き回るので、撮影も一苦労であった。
 
本種に刺激されて、去年から飼育しているゲンゴロウについても、60cm水槽で今年こそ繁殖に成功したいと思っている。
 
3月8日
 今日はエサがないので、煮干の欠片を与えてみた。
匂いで分かるようで、しばらくすると見つけて齧っていたが、かなり固そうで食べづらいようだった。
ビン内のマメゲンゴロウ
(2006.3.6)
 
刺身を食べるマメゲンゴロウ
(2006.3.6)
 
2匹採集 アカムシを食べるマメゲンゴロウ
今の時期はアカムシがほとんど採れないため、この後ミズムシを殺したものを与えてみたら食べてくれた。
(2006.3.12)
3月11日
 1匹だけでは寂しいので、2匹採集してきた。
雨降りの後で、先週採集した場所は濁って、水生昆虫の姿が見えなかったが、他の濁っていない場所でマメゲンゴロウを採集することができた。
1cmに満たない大変小さいゲンゴロウなので、500mLガラスビンで3匹を飼育することにした。
良質なエサであるアカムシを探したが、なかなか見つからずやっと1匹採ることができ、与えたところ2匹が取り合い、引き千切って食べていた。
ハエが溺れていたので、そのまま与えてみたが、水に浮くため見向きもしなかったが、しばらく経ってから確認したところ、ハエの翅と胸部だけになっており、食べてくれたことが分かった。
3月12日
 今日もやっとの思いで1匹だけアカムシを採り、与えることができたが、まだアカムシやボウフラがほとんど採集できないため、それに代わる良いエサとしてミズムシを殺したものを与えてみたら、食べてくれた。アカムシほどではないが、嗜好性はいいようだ。
 
産卵 マツモに産み付けられた卵
エサを与えた後に次々と産み出した。
(2006.3.12)
3月12日
 マメゲンゴロウにエサをやった後、ガラス面と水草に1個ずつ白い楕円形の卵があることに気が付いた。
さっきまでは無かったので、今産卵しているらしく、水草のマツモに止まって動いているマメゲンゴロウを観察していると次々に白い卵が水草に産み付けられていった。
卵の大きさは0.5mm×1.5mmほどの大変小さいものであった。
主に水草の先端部の新芽が密生している中に産み付けられており、外敵から卵を保護する意味もあるのだろう。
 
卵はほっておくと親に食べられてしまうそうなので、別の500mlビンに移した。
卵は水草に隠れて何個あるのかは分からないが、7,8個くらいのようである。
ガラス面にあった1個は移す時には既に無くなっており、食べられてしまったようだ。
また産卵できるように、他のマツモを入れておいた。
孵化後の幼虫飼育も楽しみだが、何しろ小さいマメゲンゴロウの幼虫なので、飼育は難しいと思うが、なんとか飼育していきたい。
水草を入れ替えてから、ピッタリと産卵しなくなった。日中の水温が高い時に産卵するのかもしれない。
夜に産んだ水草を見てみると、夜は水草が花のつぼみのように閉じるため、卵が完全に隠れてしまった。マメゲンゴロウはこの効果を狙って産卵しているのかもしれない。
 
3月13日
 帰宅後、夜9時頃に産卵していないか確認したところ、マメゲンゴロウ3匹が水草内に潜っている状態で、卵は1個見つけただけに留まった。
心配した通り、水草に産み付けられた卵を食べてしまったようである。
しかし、ゲンゴロウの幼虫は肉食性で共食いする上、常に生きた小さいものを与えなければならないので、多数の飼育は事実上不可能で、昨日採卵したものも含めれば8,9個ほどあるようなので、まったく問題ない。
 
夕食がカツオのたたきだったので、小さくちぎったものを与えるとよく食べた。
 
3月14日
 今日は少しでも卵が食べられないようにと、朝刺身を細かくちぎったものをやや多目に入れて出勤した。
夜、確認してみると、卵は2個確認できただけで、刺身の食べ残しのため、水が汚れてしまったので、水換えをした。
エサの劣化が著しく早いため、卵が食べられてしまうのは防げないようである。
 

マメゲンゴロウと卵
日中に今日産卵した卵を食べてしまったらしく、3匹とも水草内に潜った状態だった。
見つけた卵は奥に見える卵1個のみ。
(2006.3.13)
3月15日
 朝と夜、ミズムシを3匹ずつ与え、とてもよく食べてくれた。
卵は見当たらなかった。
 
3月16日
 夜、帰宅して見てみると、なんとマメゲンゴロウが1匹、ビンの外の側面に背中から張り付いて、干からびたようになっていて、ビックリした。
死んでいるのかと手で掴み、ビンの中に入れてみると再び泳ぎだした。
陸地が無いので出ないだろうとフタをしていなかったのだが、どうやら水草に乗っかり、飛び出したようだ。
そのままビンを伝って水分によって背中から張り付いて身動きが取れなくなってしまったのだろう。
しかし、床に落下し、どこかへ行かなくて事なきを得てよかった。
今日もミズムシや刺身を少し与えて、どちらも美味しそうに齧り付いていた。
 
3月17日
 夜、帰宅して見てみると、交尾をしていた。
どう見ても前足に吸盤らしきものが見当たらないので、すべて♀かなと思っていたが、完全に合体していた。写真を撮ろうとしたら、離れてしまった。
 

ミズムシを食べるマメゲンゴロウ
生きているミズムシを捕まえることはできないが、死んだものならすぐに食べる。
(2006.3.15)
幼虫採集
3月18日
 飼育記には書いていなかったのだが、3月11日に本種の幼虫と思われるものを採集したのだが、あまりに小さいため一緒に入れて持ち帰ったミズゴケと一緒になって見つからなくなってしまい、そのままにしておいたプリンカップがあったのだが、ミズゴケを取り出してみるとやっと幼虫を見つけることができた。
飢え死にしなかったのが意外だったが、外に置いてあったので、体力の消耗が少なかったのだろう。
よく見るとやはりゲンゴロウの仲間の幼虫で、大きさからも本種である可能性が非常に高い。
幼虫の大きさは7mm×1.5mmほどで、大変小さく、2齢幼虫と推測している。
今日もマメゲンゴロウを採集した場所へ行って見たが、3匹のマメゲンゴロウを確認できたが、他のゲンゴロウは見ることができなかった。
プリンカップに水草とエサとしてミズムシの子供を生きたまま入れて見たところ、目の前にミズムシが来るとすぐに噛み付き、捕食した。
本種の幼虫は大変小さい上、生きたものしか食べない体外消化型のため、エサの確保は難しいと思われたが、常に確保できるミズムシを食べてくれることが分かったので、累代飼育は問題なく成功しそうである。
 
3月19日
 今日も幼虫にミズムシの子供を与えてみたが、体長が2mmほどのかなり小さいものでないと、すぐに逃げられてしまうようだ。
常にミズムシの子供を安定供給できるように、去年から屋外に置いてあるボウフラ発生用の特大プラケースの他に大プラケース2個を新たにミズムシ養殖用として作成した。
今ある特大プラケース内にも相当数のミズムシがいるが、近い将来ゲンゴロウの幼虫飼育にも備えてのことである。
エサとなるミズムシを採集した時にアカムシも1匹採れたので、幼虫に与えたところすぐに捕らえ、みるみるアカムシの真っ赤な体液が幼虫に吸い取られていくのを観察できた。
マメゲンゴロウの幼虫@
7mm×1.5mm程度で2齢幼虫ではないかと推測している。
(2006.3.19)
 
マメゲンゴロウの幼虫A
大変小さいが、消化液を注入できる鋭い大アゴを持つ凶暴な昆虫である。
(2006.3.19)
 
ミズムシを狙うマメゲンゴロウの幼虫
体長2mmほどのミズムシの子供でないと、なかなか捕らえることは難しいようであった。
(2006.3.19)
 
ミズムシを食べるマメゲンゴロウの幼虫
写真ではミズムシの子供が分かりにくいが、口先の白っぽいものがミズムシの腹面である。
(2006.3.19)
 
ミズムシを捕食するマメゲンゴロウの幼虫
食欲旺盛で、ミズムシの子供をよく食べてくれた。
(2006.3.18)
 
アカムシを捕食するマメゲンゴロウの幼虫
アカムシは大好物で、捕らえるとみるみるアカムシの真っ赤な体液が幼虫に吸い取られていった。
(2006.3.19)
 
孵化
3月21日
 そろそろ孵化しているんじゃないかと卵が付いている水草をどけて見ると、小さく黒いマメゲンゴロウの1齢幼虫を見ることができた。
体長は3mmほどで本当に小さいが、まさにゲンゴロウの幼虫の形をしている。
探して見ると5匹発見できた。
幼虫の大きさはクワガタ用マットによく発生するコバエと同じくらい小さく、飼育は難しそうだが、あっさりとここまで飼育できるとは本当に感激した。既に黒く色付いているので、2,3日前に孵化していたのかもしれない。
普通のプリンカップに水を浅く入れたものを2カップ用意し、2匹と3匹を入れた。水草も少し入れた。
エサだが、これほどまでに小さいだけにミズムシの子供であっても同じくらいの大きさで食べることができないので、ミズムシが発生しているケースにケンミジンコも発生しているので、スポイトで採って与えてみた。
ケンミジンコはなかなかすばしっこく捕食するのは大変そうだが、捕らえて食べているところを観察できた。
マメゲンゴロウの1齢幼虫@
体長3mmと本当に小さい。
(2006.3.21)
 
マメゲンゴロウの1齢幼虫A
(2006.3.21)
 
マメゲンゴロウの1齢幼虫B
(2006.3.21)
 
マメゲンゴロウの1齢幼虫C
10円玉との大きさの比較。
10円玉の上に2匹、左手前に1匹いる。
(2006.3.21)
 
3月22日
 夜、気になる1齢幼虫の様子を見てみたが、5頭とも元気であった。こういった小さい生き物はコロっと逝ってしまいそうで、心配していたが、大丈夫そうで安心した。
しかも、ゲンゴロウの仲間の幼虫は共食いが激しいと書いてあったが、プリンカップで2,3頭の飼育でも共食いは今のところ起きていない。幼虫同士が接触する時もあるが、どちらもすぐに逃げてしまうので、飢えていない限りは争ったりしないようだ。
ただ、積極的にケンミジンコを狙おうとするところが見られないので少々心配しているのだが、プリンカップ内のケンミジンコを既に捕食していて満腹しているのではないかとも考えている。
ファンがいないと言っても過言ではないこのような小型で地味な普通種のマメゲンゴロウでも自己採集個体ということで愛着もあり、今ではゲンゴロウ飼育よりもハマっている。
 
卵を管理しているプリンカップを探してみると、2匹1齢幼虫が見つかった。
昨日発見した時と同じ色と大きさだったので、孵化後当日からこのように黒い幼虫のようだ。
数から言って3月12日の初回産卵分の卵が孵化したものだと考えられる。
水温は平均して20℃前後だったので、この水温では9,10日で孵化すると思われる。
 
ゲンゴロウの幼虫は肉食だが、刺身に群がったことがあるということが書かれていたので、刺身を1mmくらいにちぎったものを与えてみると、確かに動いていないのに齧り付いた。見ていると狩りもうまいとはとても言えないので、自然界においても主に弱ったミジンコやアカムシ、あるいは死んだものなどを食べているのではないだろうか?
 
3月23日
 夜、確認してみると、1齢幼虫が1頭死んでいた。見るとくの字に曲がって死んでおり、共食いした可能性がある。
そのプリンカップは4頭入れており、出会う確率が高かったことも原因の一つなのだろう。
他の6頭はとても元気で、刺身を与えると食べてくれた。
ケンミジンコを捕らえようとしたり、食べている様子はまったく見られなかった。
 
2齢幼虫
3月24日
 朝、1齢幼虫の様子を見てみると、なんと1頭やや大きく、下半身が透明の幼虫を見つけた。
近くには1齢幼虫時の抜け殻があり、2齢幼虫に脱皮したことが分かった。
しかし、なんとも早い。21日に孵化して、わずか3日目で加齢してしまうとは驚きである。
 
3月25日
 朝、2齢幼虫を見てみるとだいぶ色付いてきていた。しかし、1齢幼虫と比較すると淡い茶色で黒くはならないようだ。
昼頃、再度幼虫達を見てみると1齢幼虫が3頭いたプリンカップ内にも抜け殻があった。しかし、いくら探しても1齢幼虫が2頭しか見つからなかった。さらに念入りに探して見ると、なんと全身透明の2齢幼虫を発見した。
色が付いているのは、内臓と目だけで後は完全に透明で、すぐ見失ってしまうほどであった。
マメゲンゴロウの2齢幼虫
脱皮翌日の幼虫
(2006.3.25)
 
マメゲンゴロウの1齢と2齢の比較
大きさも違うが、2齢幼虫では体色が淡くなるようだ。
(2006.3.25)
 
幼虫飼育の経過
その後、2齢幼虫に見合うエサがなかなか確保できず、刺身を与えてみるとよく齧り付いたが、すぐに刺身が真っ白になり、幼虫の消化液のためにもろに溶け出し、水質を悪化し、エサとしても向いていないようであった。
エサが確保できないことで共食いが多発し、採集した幼虫以外はいなくなってしまった。
採集した幼虫のほうはやや大きくなっているので、小さいミズムシをピンセットで顔の前に差し出すだけで齧り付いてよく食べた。
毎日、朝晩欠かさずミズムシを1匹与えて飼育した。
 
蛹化用のセット 蛹化用ケース
ミニプラケースにピートモスを詰め、上陸できるように水草を入れている。
(2006.4.19)
4月19日
 毎日、ミズムシに齧り付いていた幼虫だが、今朝はなぜか見向きもしなかった。夜再度与えてもまったく興味すら示さなかった。
これは蛹化する兆しではないだろうか?
この幼虫は採集当初2齢幼虫ではと飼育していたものだが、現在の体長は12mmにも成長しており、3齢幼虫の可能性もある。
ただ、成虫の体積に比べると小さいように見えるので、脱皮の兆しなのかもしれないが、念のため上陸が可能な蛹化用ケースをセットすることにした。
ミニプラケースに湿らせたピートモスを詰め、水を入れた6cmくらいのタッパーを埋め込み、水草を入れて上陸できるようにセットした。
当初、上陸用にミズゴケを陸から水の中へ垂らしてみたのだが、ミズゴケが水をどんどん吸い取り、ピートモスに吸収されてあっという間に干上がってしまい、慌てて水を入れるというトラブルもあった。
 
4月20日
 蛹化用セットの翌日、すでに幼虫の姿は見えなくなっていた。
羽化の確認 羽化していた新成虫の死骸
残念なことに失敗したと思い込み、ミズゴケ内で新成虫が出てきていたことに気付かなかった。
(2006.8.12)
8月12日
 幼虫が消えてから、幼虫の繭らしきものも確認できなかったのと、一向に成虫の姿が確認できなかったため、失敗と思い込み、蛹化用ケースを放置したままにしていたが、夏休みだしケースを片付けようと蛹化用ケース内のミズゴケを取り出すとその下になんとマメゲンゴロウの死骸が出てきた。
既に胸部と腹部がバラバラになってしまっていたが、普通サイズの個体であった。
まだ2齢幼虫と思い込んでいたが、どうやら4月中に3齢幼虫になっていたようである。
更にはこの親のマメゲンゴロウは餌不足の中、現在1匹だけになってしまったが、仲間の死骸を食べることによって今も元気にしていたので、エサが豊富なロックポンドに放してやった。
残念なことではあったが、これで今までの飼育法で成虫まで育てられることが分かっただけでも、僕にとっては大きな前進である。
小型マメゲンゴロウの累代飼育は1齢幼虫のエサの確保が累代飼育を難しくさせている要因であり、その問題さえ解決できれば成長も早いし、非常に気軽に飼育できるよい水生昆虫であることが分かった。多数の1齢幼虫が得られた場合は共食いさせて2齢幼虫からミズムシなどの子供を与えたりするのもよい方法の一つだと思う。
またいつか別の種で小型ゲンゴロウの飼育に挑戦してみたい。
 
 

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