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サキシマヒラタ飼育記
Dorcus titanus sakishimanus
 
産地:西表島
 
 
鎌倉の虫達だけでは飽き足らず、昆虫撮影を兼ねて西表島まで旅行してきました。
クワガタ採集が目的という訳ではないのですが、ホテル周辺の道路は外灯すらなく、灯火採集も困難な場所でしたが、運よく西表島産サキシマヒラタの♀を2匹採集することができました。
繁殖の容易な種ではありますが、一般に出回っているのはほとんど石垣島産でやや希少であるのと、自己採集ラベルの思い入れの強いクワガタということで、累代飼育していきたいと思います。
 

採集地の西表島の風景
 


森林内にて採集
6月28日
名所めぐりを兼ねて、森林内を歩いているとふと倒木に黒く動くものが目に留まった。
近づいて見てみるとなんと泥の付いたサキシマヒラタの♀であった。すかさずそのままの状態で撮影してから、採集した。
周りの様子からこの倒木に産卵していたようである。恐らく倒木の下側の材や土部にかなり産卵していたと思われる。
やや動きが鈍いのが気がかりだが、35.5mmの立派な完品の♀であった。
倒木の下に何かいないか持ち上げて見ると倒木と地面の間にトンネル状のクモの巣があり、その中になんともデカい真っ黒なタランチュラのようなクモがいた。後で調べたところオオクロケブカジョウゴグモというクモであった。

倒木上のサキシマヒラタの♀35.5mm@
産卵中と思われる泥の付いた♀であった。
(2006.6.28)
倒木上のサキシマヒラタの♀35.5mmA
(2006.6.28)
灯火での採集 灯火採集したサキシマヒラタの♀33mm
(2006.6.29)
6月29日
旅行最終日はホテルを変えて1泊したが、ホテルの明るい外灯があったので、夜何か飛んで来ないか見に行くと外灯の真下の芝生上にサキシマヒラタの♀がノコノコ歩いているのを見つけ、採集することができた。
1匹目に比べるとやや小型で、体長は33mmだったが、とても元気がよく艶もあり、新鮮な個体なので、繁殖に期待したい。
 
採集した♀33mmは部屋に持ち帰り、撮影した。
産卵用ケースのセット
7月1日
100種類以上の虫の写真を撮影することができ、大満足で旅行から帰宅した。
サキシマヒラタ2匹も無事に持ち帰ることができた。
それぞれ中プラケースにセットしたが、マットが少ししかなかったので、ケース半分以下しか入れることができなかった。
次週マットを購入し再セットする予定。材は太く柔らかめのコナラ材が1本あったが、一番元気な♀33mmのケースに使用することにし、♀35.5mmは小さめでやや硬めのコナラ材を使用した。
しかし、♀2匹を入れてみると、採集時動きが鈍く感じた♀35.5mmが採集以来ゼリーに齧り付いていて体力を回復したようで、とても元気になっていた。
ローゼンベルギーの飼育のために数本買っておいた霊芝材が残っていたので、加水して♀35.5mmに使用する予定。
 
7月3日
 余っていた霊芝材を使おうと思っていたが、大きめのコナラ材があったので、昨日加水・陰干ししたものを♀35.5mmのケースにセットした。最初に入れていた小さめの材はまだ産卵跡もなかったため、取り覗いた。
 
1齢幼虫確認
8月15日
以前累代飼育していた石垣島産/CB サキシマヒラタでは必ずケース底面から卵が確認できていたのだが、西表島産の今回のセットでは1個も確認できていなかった。産卵材も削った跡も見られない。
自己採集の西表島/WILD サキシマヒラタは天然物で環境の違いから気難しい可能性があり、産卵は無理かと思っていたのだが、♀35.5mmのケース底面を見てみると複数の1齢幼虫が活発にマットを食べているところを見ることができた。
♀33mmのケース底面からは1齢幼虫の姿は見られなかったものの、幼虫が作ったと思われる食痕が見られた。
使用しているマットは良質なので、幼虫取り出しは少し待ち、その間に幼虫の飼育の仕方を検討することにした。
 
幼虫採取
8月17日
幼虫飼育用に奈良オオのカロリーマットを使用することにし、今日到着した。
幼虫採取の前に800mLガラスビンにマットを詰めた。マットの入ったダンボールを開けると発酵臭がプ〜ンと臭い、臭いに惹かれてアメリカミズアブが数匹群がって来てしまった。以前快適〜とかという安価なマットを大量に購入したことがあったが、開封前からアメリカミズアブの幼虫が沸いていて結局大損したことがある。
今回はあまり出回っていない西表島産ということと、自己採集ということでマットも奮発してみた。
 
マットのビン詰めが終わり、いよいよ幼虫採取をすることにして、ケース底面から幼虫が見えていた♀35.5mmのケースから開けてみることにした。するとマットから2齢幼虫4頭が出てきたのみで材には削った跡すら見当たらなかった。
♀35.5mmは動きが非常にスローで相当体力を消耗しているようで、産卵どころか寿命が近いようだ。
♀33mmのケースを開けてみると、幼虫は見当たらず、食痕と思っていたところは成虫がマット中をトンネルを掘っていた跡だった。
しかし、♀33mmは非常に元気でかなり若い個体のようだ。
ただ、西表島の大自然で育った天然個体は予想通り、産卵材の質などに気難しく以前飼育していた石垣島産CB個体のようにはいかないようである。
今回のセットは石垣島CB個体よりもきめの細かい良質マットを使っており、石垣島産CB個体であればきりがないほど産んでくれるセットである。
 
採取した2齢幼虫4頭は1頭が2齢初期、3頭は2齢中期であった。
1頭ずつビンにセットし、幼虫飼育を開始した。
たった4頭とかなり累代飼育には不安だが、4頭いれば雌雄偏る確率は低いし、仮に♂だけしか羽化できなかったとしても、元気な別血統の♀33mmがいるので、来年にもブリードできるはずである。
サキシマヒラタの2齢初期幼虫
天然物のためか産卵数は非常に少なく4頭しか採れなかった。
(2006.8.17)
サキシマヒラタの2齢中期幼虫
初期の幼虫の3倍ほどある。
ちなみに1齢と2齢幼虫の違いは体の大きさではなく、頭部の大きさで判別できる。
(2006.8.17)
 
♀蛹化 蛹化したサキシマヒラタの♀
(2006.11.12)
10月22日
♀が蛹化した。他の♀も既に蛹室を作成して前蛹になっていた。
 
10月29日
2頭目の♀が蛹化した。
 
11月5日
3頭目の♀が蛹化した。
4頭目は蛹室を作成していなくてかなり大型なので、♂のようだ。
 
♂幼虫を中プラケースへ サキシマヒラタの3齢幼虫(18g)
より大型を目指し、中プラケースへ移動させた。
(2006.11.12)
11月12日
幼虫は4頭しか得られなかったが、運よく♀3頭に♂1頭という累代飼育には理想的な割合になってくれた。
♂幼虫のマットがだいぶ食べられているので、そろそろマット交換をすることにした。ビンから♂幼虫を掘り出すと結構大きくなっており、体重は18gになっていた。
より大型を目指したいので中プラケースに移動させることにした。マット交換のショックを防ぐためにビンにあったマットも混ぜたものを使用した。ただ、新しいマットも初回に使用していたカロリーマットなので多少劣化しているかもしれない。
幼虫はまだ白いので、これからも大きくなって70mmオーバーの大型個体を羽化させたい。
種親の状況
11月12日
種親は不注意により長期間エサ切れになってしまっており、様子を見たところ♀35.5mmはかなり前に死んでいたと見えてバラバラになっていた。♀33mmはまだ元気そうだったがフセツのほとんどが取れてしまっていた。材はかなり齧られていたが、幼虫はまったくいないので交尾していなかったようである。
更に死んだ♀35.5mmのケースの材がボロボロになって大きな坑道があったので、材を取り出してみると下から3齢幼虫が1頭見つけることができた。最後の幼虫となるがかなり劣化したコナラ材のため、小型で既に成熟しており、体重は8gだった。
幼虫は透明度がなく、雌雄判別はよく確認できなかったが♀の卵巣が見えなかったので、小型の♂になるかもしれない。
幼虫は1Lガラスビンに移動させた。
 
♀羽化 サキシマヒラタ新成虫の♀38mm@
ピカピカの新成虫はとても綺麗。
(2006.12.22)
11月16日
10月22日に蛹化した♀が羽化した。
 
11月24日
10月29日に蛹化した♀が羽化した。
 
12月3日
11月5日に蛹化した♀が羽化した。
 
12月22日
羽化して1ヶ月前後経過した♀2匹を取り出してみることにした。
1匹目に羽化した♀が37.5mm,2匹目が38.0mmであった。種親の♀35.5mmよりも大きく新鮮な新成虫が見ることができて感激。♂はまだ幼虫をしている。
 
2007年1月27日
11月12日に取り出した小さい幼虫が4匹目の♀として蛹化した。
 
1月28日
3匹目の♀を取り出した。体長は39.5mmで一番大きかった。
サキシマヒラタ新成虫の♀38mmA
(2006.12.22)
サキシマヒラタ新成虫の♀38mmB
(2006.12.22)
サキシマヒラタ新成虫の♀38mmC
(2006.12.22)
サキシマヒラタ新成虫の♀38mmD
(2006.12.22)
2007年4月15日
2月頃からプラケースの側面から蛹の一部が見えていたのだが、4月に入って内部がマットで見えなくなっており、既に羽化して数週間は経過していると思うのでそろそろ掘り出してみることにした。
出てきた新成虫は見事な完品で体長も65mmとまずまずの大型個体だった。
まだ前翅がワインレッドをしており、羽化後まだ2週間程度のようだ。
今年の夏にはこの♂と♀達をペアリングさせて累代飼育を続行していきたい。
 
5月12日
 羽化後約1ヶ月が経過した♂は完全に固まっており、威嚇できるようになった。後食ももうすぐだと思う。 
サキシマヒラタ新成虫の♂65mm@
5頭いたうち唯一の貴重な♂がめでたく完品にて羽化させることができた。
(2007.4.15)
サキシマヒラタ新成虫の♂65mmA
(2007.5.12)
ペアリング開始
7月22日
時間がなくペアリングが遅れたが、♂のケースに去年の11月16日に羽化した♀37.5mmを入れてペアリングさせることにした。


 

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