ブッダノコギリクワガタ(フィリピン北部亜種) | |
学名:Prosopocoilus buddha cavifrons | |
長歯型の♂53mm(2023/2/5 ルソン島産/WF1) |
Data | |||||||||||||||||||||||||
和名 | ブッダノコギリクワガタ(フィリピン北部亜種) | ||||||||||||||||||||||||
体長 | ♂:30.3〜56.8mm ♀:27.5〜28.2mm ※ 飼育では58.5mmの記録がある。 |
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分布 | フィリピン(ルソン島,ミンドロ島,マリンドック島,パナイ島,ネグロス島) | ||||||||||||||||||||||||
寿命 | 約3ヶ月 | ||||||||||||||||||||||||
飼育難易度 | 簡単 ★★★☆☆ 困難 | ||||||||||||||||||||||||
解説 | ブッダノコギリクワガタのフィリピン北部亜種。 大アゴは左右ほぼ対称で、弧を描くように緩やかに湾曲し、内歯は先端付近に位置する。 体色は褐色味が強い傾向があるが、パナイ島とネグロス島は黒褐色。 飼育下では材と1次発酵マットに産卵している。
飼育記録については以下に飼育メモとして記載していきたい。 |
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飼育メモ |
2022年8月9日 ヤフオクにてブッダノコギリクワガタのフィリピン北部亜種の天然個体の♂1匹♀2匹の成虫トリオを落札した。 正直、大アゴが左右非対称の個体が多い本種はあまり好きではなかったが、この亜種は本種の中でもほぼ左右対称で湾曲している大アゴと赤みを帯びる体色はかなり特徴的で、あまり見かけないこともあってブリードに挑戦することにした。 出品されていたのはこの1セットだけで高騰するかと思いきや競り合うこともなく落札することができた。 続きを表示8月10日 天然個体なので、まずは♀だけで産卵させたいので予め産卵用ケースをセットすることにした。 ♀は2匹なので、2個のコバエシャッター中を使用し、若干内容を替えて以下の2つの内容でセットしてみた。 セットA・・・ノコギリの幼虫飼育で使用したマット(ヒラタ・ノコ1番)に人工カワラ材を埋めたもの。 セットB・・・ニジイロクワガタの幼虫飼育で使用したマット(XLマット)とノコギリの幼虫飼育で使用したマット(ヒラタ・ノコ1番)に小さめのクヌギ材とコナラ材を1本ずつ埋めたもの。 成虫トリオが到着した。3匹とも元気な状態で問題なさそうだった。 産地は「フィリピン ルソン島 イフガオ州 Mt.Amuyao」とのこと。2匹の♀はA品(完品)と、右前・中脚フセツ欠けのB品で体長はどちらも28mmとされていたが、改めて測定し直し、A品は29.1mm、B品は27.2mmだった。 やはりB品のほうが光沢が鈍く、ある程度は産卵済みの可能性が高い。 撮影を済ませ、早速A品♀を昨日準備しておいたセットAに、B品はセットBに入れた。 A品の♀はケースに入れるなり、ゼリーを食べ始め、数時間後に再度確認した時にはカワラ材を齧って産卵行動をしていた。しばらく観察してると開けた穴にお尻を突っ込んで産卵するところまで確認できた。材産みの傾向が強いようなので、材はあまりマットに埋めないほうがよいかもしれない。 夜になって♀が歩き回りだして飛び始めたので、よいタイミングだと思い、マットの量を減らしてカワラ材の露出を増やした。ただカワラ材はかなり固く、目立った産卵痕が見られなかったので、産卵のポーズだけで産卵できていない可能性も考慮し、小さめで柔らかめのクヌギ材を1本追加した。 以後、A品はAライン、B品はBラインとする。 Bラインの♀は入れて以来、姿をいていない。確認してみると産卵木の裏に止まっていたが特に目立った産卵痕は見つからなかった。 Aラインと同様マットを多少減らして産卵木の露出部を増やしてみた。 再セット以来、カワラ材で産卵していないようなので、確認したところ、クヌギ材の切断面に♀がいて、恐らく産卵しているような痕もあった。 Bラインの♀は相変わらず外から確認できなかった。 夜、再度確認したところ、Aラインの♀はクヌギ材とケース側面との隙間でクヌギ材を削って産卵しているようだった。 Bラインの♀のほうは2つの材周辺のマットに縦穴があり、マット中から材に産卵している可能性がある。 Aラインの産卵用ケースのカワラ材は当初産卵行動はしていたもののまともな産卵痕がなく、やはり歯が立たなかったようなので、大きめで柔らかめのクヌギ材と交換することにした。 カワラ材は産卵できていない可能性大なので、保管して時間を置いてから別の種への使用も検討したい。 Bラインの産卵木を少し確認したところ、かなり削っており、卵を入れる空間までは見つかったが肝心の卵は見つからなかった。 Aラインのほうも最初に削ったクヌギ材のほうを確認したところ、やはり卵は見つからず諦めかけた時に1個だけ卵が見つかった。 相当削っていたのだが、産卵するところまではなかなかいかないような印象を受ける。♀はゼリーを食べるか産卵木周囲にいるかのどちらかなので、マットへの産卵はほぼしないようだ。 得られた卵はプリンカップにフォーテックの「ヒラタ・ノコ1番」(以下ヒラタ1番)を篩にかけ微粒子にいたものでセットした。 8/21に採った卵が孵化した。 卵はAラインのこの1個しか採れていないが、太めのクヌギ材が本命だと思っているので、多数の産卵に期待したい。 産卵状況を確認したが、Aラインの♀は産卵痕はあるのだが、卵が無かったり、死滅したと思われる皮だけになった卵もあった。 太めのクヌギは明確な産卵痕がなかったことから、かなり厳しくなってきたので、小さいほうのクヌギ材を取り出して、新しい普通サイズのクヌギ材を入れてみた。状況から考えて産卵後、早いうちに採卵したほうが卵を死なせずに済む可能性もあるので頻繁にチェックするようにしたい。 孵化した1齢幼虫を800mlクリアボトルにセットした。 まだたった1頭でもっと欲しいところだが、相変わらず卵が得られていない。Aラインの期待していた太めのクヌギ材も産卵痕が見つからないので、同じサイズのクヌギ材と取り替えた。 Bラインは試しにAラインのクヌギ材を使用し、♂と同居させてみた。 Bラインの普通サイズのクヌギ材のほうが派手に削られており、産卵モードに入ったと判断し、産卵に専念させるため、同居させていた♂を隔離した。 Aラインの産卵状況が芳しくなく、太めのクヌギは断面に削った跡が見られたが、全体的に多湿気味で柔らかすぎるようなので、産卵確認して材を取り換えることにした。クヌギ材から辛うじて1個の卵が見つかった。1本加水済みのクヌギ材に取り替えた。 本種はかなり産卵木に選り好みがあるようで、いかに産卵に適した産卵木を用意できるかがブリードの鍵になるようだ。 これまでの飼育で材産みであることはほぼ確実となったので、小さめのクヌギ材を追加し、試しにAラインに使用するマットをフォーテックの産卵1番に変更して再セットしてみることにした。これまでのマットは黒っぽくなるまで発酵が進んだ本土ノコが好むようなマットだったが、発酵の浅い産卵1番を使用することで産卵を誘発する効果を狙ってのことである。 Bラインの産卵用ケースの底面に幼虫が見えたので、取り出すことにした。 マットからは見えていた2齢幼虫1頭のみ得られた。木屑が多く出ている小さめのクヌギを割ってみると2齢幼虫2頭、1齢幼虫4頭、卵1個が得られた。 得られた幼虫は800mlクリアボトルで単独飼育、マットはヒラタ1番を使用した。ヒラタ1番は木目が粗めではあるが、幼虫はほぼ材から出てきたため、微粒子にする必要はないと判断、篩にかけずにそのまま使用した。 1頭たりとも無駄にしたくないので、材割りした屑は取りこぼしが見つかるよう、しばらく小さめのプラケースで管理することにした。 産卵用ケースは大きめのクヌギ材を1本追加して、再セットした。 Aラインの産卵用ケースの底面をみたところ、卵が1個発見することができた。マットが適していればマットにも産むことが分かったので、Bラインについてもマットを産卵1番に変更した。 Bラインの卵が孵化した。 10/1に見つけたケース底面から見える卵が昨日までは問題なかったが今朝みると潰れているようだった。更にこの卵以外で外から確認できる卵はなく、また苦戦しそうである。 10/4に孵化したBラインの1齢幼虫は他の幼虫と同様に800mlクリアボトルに移動させた。 種親の♂が死亡した。餌切れさせていなかったので寿命と思われる。 9/18に採った卵は残念ながら孵化せず萎んでしまった。 Bラインの様子を見ようと大きめのクヌギ材を持ち上げたところ、下に1齢幼虫が1頭見つかった。♀も一緒にいたがクヌギ材自体に産卵痕は少なくあまり産んではいないようだった。 これで幼虫はAラインと合わせて10頭だが、固すぎて回収したカワラ材から出てきた不明幼虫もいるが恐らく本種なので11頭ということになる。 Aラインの産卵状況を確認したところ、大きめのクヌギ材は産卵痕が見られず、小さめのクヌギ材では多少産卵痕があったため、表面を削ってみたところ、2個の卵が得られた。他に萎んた卵も見られたため、孵化率は悪いようだ。 得られた卵は120ccのプリンカップにヒラタ1番でセットした。 Aラインの♀が死んだ。前回得られた卵もことごとく死滅し、孵化率が異常に悪いという状況から期待できそうにないが、Bラインのほうはまだ元気でそこそこ幼虫が得られるのではと思っている。 飼育中のクリアボトルのうち2本にコバエの幼虫が発生していたのでマット交換をすることにした。 すべてのボトルでセット後に幼虫が確認できていなかったので少し不安だったが、慎重に掘り起こしていくと2本とも3齢幼虫が出てきた。どちらも♀斑が見えないので恐らく♂のようであった。 夜、Bラインの産卵用ケースを確認したところ、♀が死んでいた。天然個体にしては長生きだったと思う。産卵木に幼虫がいると思うので、次の休みに材割りしたいと思う。 朝、産卵用ケースの側面から大きめの幼虫が確認できた。ケースの底面などにも幼虫が動いた跡があり、複数の幼虫がいることは確実で結構苦労したほうではあるが成功といっていい。 棚の奥にあって確認できていなかったボトルにも1本コバエの幼虫が発生していたものがあり、幼虫を取り出したところ、明瞭な♀斑がある3齢幼虫が出てきた。 ♀なので500mlクリアボトルで飼育することにした。 Bラインの幼虫を割り出すことにした。 2本の産卵木からは3齢幼虫1頭、2齢幼虫9頭(1頭は潰れてしまった)、1齢幼虫1頭が採れ、マットからは2齢幼虫2頭が採れた。 産卵木の芯に近い箇所はより固くなり、無理に割ろうとすると幼虫がいた場合、幼虫を潰してしまう危険があるので、しばらくは材割りした残骸と共に放置することにした。 得られた幼虫12頭はすべて800mlクリアボトルで単独飼育、マットはヒラタ1番を使用した。ノコギリ系はマット飼育で容易に長歯型が育てられるのでギネスでも狙わない限りマット飼育のほうが安上がりである。 Bラインの1頭が早くも蛹室を作成していた。♀斑は確認していない個体で♂だと思っていたが、小さい為♀だったのかもしれない。 前蛹だった個体が蛹化した。やはり♀だった。500mlクリアボトルの♀幼虫も前蛹になっている。 棚の奥にあり確認していなかったボトルの内、既に蛹化していた♂の蛹を発見した。一部しか見えないので大きさは不明。 ♂と♀がそれぞれ1匹ずつ羽化していた。通常♀のほうが早いので意外ではあるが、♂はAラインで去年の8/21に採卵、8/26に孵化したもの、♀はBラインで去年の9/26に2齢幼虫で採取したものなので若干ではあるが♂のほうが早く孵化していたようだ。 撮影のために1/16に羽化したペアの蛹室を開けてみた。あまりに早い羽化ではあるが種親と遜色のない長歯型の♂だった。 Aラインはなかなか産卵せず、産んだとしても孵化しないものがほとんどで結局孵化したこの1頭のみが羽化している。 今回はたまたまトリオだったのが救いではあったが、Bラインの♀ではよく産卵して21頭の幼虫が得られているので個体によって難易度がかなり異なることになる。ただ状態の異なる天然物と比べブリード物では簡単になってくるのではと思っている。 ♂はAライン、♀はBラインで血統が異なるのでこのペアでブリードを続行してみたい。 1/16に羽化した新成虫ペアを取り出して体長を測ったところ♂は53mm、♀は30の個体でいずれも種親よりやや大きい個体だった。 1/23に羽化した♀も取り出してみた。途中まで800mlクリアボトルで飼育していたものだが、マット交換時♀斑を確認したため、11/17に500mlクリアボトルに変更した個体だったが、体長は29.1mmと800mlクリアボトルで飼育した♀とほとんど変わらない大きさだった。 ♂が後食を開始した。1/16に羽化した個体なので羽化から162日も掛かったことになる。羽化した個体の多くはペアにして販売したため、サンプルとしては少ないが5ヶ月少々の休眠期間があるようだ。 幼虫飼育のクリアボトルはまだすべて開けたわけではないが、外からマットにまったく変化がなく諦めていたボトルを片付けるつもりでマットを取り出したところ、中心部に蛹室を作って♂の成虫となっていた。 |