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コーカサスオオカブトの飼育マニュアル |
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1.種親の入手 | ![]() 飼育次第で大型個体の作出は可能 |
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コーカサスオオカブトは3本角の大型のカブトムシで昆虫界最強のカブトとして有名です。 価格も手頃で入手は年中容易です。 産地はマレー、ジャワ、スマトラが一般的です。中でもマレー産は体格が良く立派です。 累代目的なら安価な小型ペアでもよいでしょう。 |
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2.成虫飼育 | |||
種親を購入したらまず♂♀別々に管理して、ゼリーを十分与えます。特にWILD物は長旅でストレスを感じているでしょうから最低1日はそっとしてあげたほうがよいでしょう。 ※しかし、神経質な虫ではありませんので、そのまま交尾させても特に問題はないと思います。 販売されているものはほとんどが天然物ですので、交尾させないで産卵させることも可能です。 コーカサスは単独飼育が基本です。♂♀一緒のケースで飼育すると♂が♀を追いかけ回し、♀を弱らせ最悪殺してしまいます。 ♀は最初から産卵用ケースにセットしておくと手間が省けます。 とにかく大食漢なのでエサ切れには特に注意して下さい。エサが不足すると止まり木や皿木などを削り、割ってしまうこともあります。ツメも鋭くそのうえ怪力なのでそれが災いしてかフセツは早く失われてしまいます。 そういう意味でもエサが常にあったほうが暴れさせずフセツを長持ちさせることにもなります。 飼育温度は夏場は30℃以上上がらないようにしましたが、実際は保湿シートでかなりケース内部は蒸れていたので恐らく30℃以上になっていたと思いますが元気にしていました。 寿命は3〜4ヶ月程度です。♀は産卵させると2ヶ月前後です。 |
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3.ペアリング | ![]() |
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購入後、2,3日して♀がゼリーを食べていたら♀が逃げないようにそっとケースの蓋を開けて♂を♀の上にゆっくり乗せてあげます。♂に♀であることを認識させるよう♀の臭いを嗅がせることがポイントです。特に大型の場合、一度♀を挟んでしまうだけで致命傷になるので注意が必要です。上手くいけばそのまま交尾します。 ♀が嫌がって逃げてしまった場合は無理にせず次の機会を待ちましょう。 |
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4.産卵用ケース | ![]() マットは安価なもので十分、高価なカブト専用マットを使う必要は無い(固め易いことが条件) |
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産卵用ケースは大きいに越したことはありませんが、飼育スペースやコストの問題もあり、大プラケースでも十分だと思います。特大プラケースならなお良いです。 コーカサスの産卵はマットを固め、その塊の中に一個ずつ産んでいきます。 マットは市販のものだけでも構いませんが、固めやすい微粒子の発酵が進んだ黒腐れしたものが最適かと思います。 クワガタの幼虫飼育に使ったマットや安価な完熟した埋め込みマットに(固め易いように)黒土を混ぜたものでも多数産卵しているので、高価な専用マットを使う必要はまったく無いでしょう。 産卵するかどうかはマットの質よりも粒子が細かく固め易いか否かにかかっています。 ちなみに専用マットの費用は4倍近くも違います。 セット時、あらかじめケース下部1/3は固めておくことで産卵し易く、体力の消耗も控えることにもなると思います。 産卵促進にクヌギやコナラの材を入れるのは有効だと思います。ただし、あまり深く埋めないで下さい。産卵の邪魔になってしまいます。 |
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5.産卵 | ![]() 色、形で大体の孵化時期を判断することができる。 細長い楕円の卵は産みたての卵、或いは無性卵の可能性もあります。 有精卵であれば丸く大きくなっていきます。 黄色くなれば孵化が近い証拠です。 |
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♀は産卵を開始するとめったにマット上に姿を現さなくなります。カブトはときどき交尾させてやらないと無精卵が多くなるらしいので、♀がゼリーを食べていたら交尾させるように心がけましょう。 既に産んだ卵を♀が潰してしまう危険があるので約3週間に一度採卵するか、別のケースに♀を移動させます。 ※ただし産卵直後の卵はデリケートで、あまり頻繁に採卵をおこなうと孵化率が非常に悪くなりますので注意してください。 産卵用マットに線虫が発生してしまったら卵を潰す可能性が高いのでもったいないがマットは全て捨てます。皿木などにも付いているので新しいものもしくは直射日光で殺菌したものと交換します。 線虫によく似たコバエの幼虫も大発生されるとマットが著しく劣化、泥上になりケース内がコバエだらけになってしまうので、蓋とケースの間に保湿シートなどを挟み、浸入を防ぎましょう。 ※交尾させて産卵させてもまったく孵化しないこともあり、個体によっての当たりハズレもあるように思います。 |
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6.採卵 | |||
採卵はマットが♀によってカチカチに固められているので無理に掘ると卵を潰してしまいます。しかし、産卵用ケースを逆さにしてマットごと別のケースに移してからマットを解して採卵すると安全ですが、衝撃の為か孵化率が悪くなるようです。 スプーンなどで慎重に採卵したほうがいいみたいです。 産みたての卵はデリケートなので、3週間ごとに採卵するとよいみたいです。 卵の状態は白くて細長いものは産んで間もないもの、白く大きい卵は産んで2週間以上たったもの、黄色くマットがまとわり付き易くなっているのは孵化が近いものです。 ちなみに私は1ペアから59個卵を得られました。 ★ダニについて 卵に白いダニが寄生することがあります。このダニは卵の汁を吸って風船のように膨れ上がり、2mmほどにもなります。 当然卵にとって有害なので採卵時注意して観察し見つけ次第取り除きましょう。吸い始めのものも見ましたがまだ0.5mmほどの大きさでした。 ダニの針状の口は細いので卵が潰されることは無いようです。 しかし、採卵していなければ確実に死んでしまうでしょう。 よく幼虫にびっしり付いてしまうコナダニの卵はこれとは別物でまったく無害でした。 |
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![]() このようにプリンカップにマットを詰め、箸などで穴を開けて卵を落として埋め戻す。 |
![]() 卵の汁を吸って異様に膨れ上がっている 吸い始めのダニもいたが、まだこのダニの1/5ほどの大きさだった |
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7.卵の管理 | ![]() |
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採取した卵はプリンカップに発酵済みのマットを詰め、箸などで卵が落ちる位の穴を開け、卵をその穴に落として埋める。状態を知る上で側面にセットするとよいでしょう。卵の成長に合わせてカップを別々にすると幼虫採取の時、便利です。 孵化した幼虫は卵の殻を食べるようなので、このとき完全に下まで落としたほうがよいでしょう。途中で引っ掛かってしまうと孵化したら更に幼虫が落ちてしまい殻が食べられず栄養不足で死亡してしまう可能性があります。 孵化までには約1ヶ月かかるのでマットの乾燥には注意しましょう。 2週間もすると幼虫が薄っすら透けて見えるようになります。 |
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8.孵化 | ![]() |
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プリンカップにセット後、1ヶ月もすると1齢幼虫が孵化してきます。 孵化したてはまだ頭部が白くデリケートなので数日後、頭部がオレンジ色に色付いたら幼虫飼育に移行しましょう。 無精卵でなければ高確率で孵化します。 粘菌や白い菌糸のようなものに卵が覆われたことがありましたが影響は無く、無事孵化しました。 |
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9.1・2齢幼虫の飼育 | ![]() 指で触れると噛み付こうとする |
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孵化した幼虫は、中プラケースなら1〜3頭、大プラケースなら3〜5頭入れます。 このとき大型個体を作出したいのなら1ケースに入れる幼虫の数を少なくします。♂♀の羽化の誤差を縮めたいのなら多くします。 マットは市販の専用マットや腐葉土、クワガタ幼虫に使用したマット、またそれらにオオクワの菌糸の食いかすを添加することにより、より大きく成長します。ドッグフードもよいと言われていますが、試したところ食べる前に水分を吸って泥状に腐り、ダニ、線虫などが発生して非常によくなかったです。 菌糸の食いかすも水が出てマットが劣化し易いので注意したほうがよいでしょう。 私は最近天然の腐葉土を主体にカブト専用マットを混ぜて使用しています。市販の専用マットには劣りますが、菌糸が廻り非常によい状態を長期間保ってくれてヘラクレスなどの幼虫もどんどん大きくなっています。ムカデなどの雑虫はいますがまったく影響ありませんでした。 マットの乾燥には弱いので必要に応じてときどき加水します。 1ヶ月もすると2齢幼虫に成長します。 |
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10.マット交換 | |||
ケースの大きさにもよりますが、大型狙いなら1ヶ月毎におこなうのが理想です。 多頭飼育で羽化の誤差を縮める場合はマット交換を遅らせることで、成長を遅らせつつ成熟を進める効果があるように感じ、結果♂は小型化して羽化が早まると思います。 |
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11.3齢幼虫の飼育 | ![]() |
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飼育開始から4ヶ月もすると3齢幼虫になっていて♂幼虫は白く大きく成長し、♀幼虫は成熟し始めて黄色く一回り小さく、この時点で♂♀の違いがはっきり表れます。 大型狙いの場合、この時点で♂♀を選別して♂は大プラケースで1,2頭、♀は3〜5頭で飼育します。 ♂♀の判別は見ためでも分かりますが、自信がない場合は幼虫の腹部の窪みのあるなしで判別できます。 ★カブトムシ幼虫の雌雄判別法 更に2ヶ月経つと♀幼虫は成熟して濃い黄色に色付くので蛹化用にセットします。 ♂幼虫はだいたい3、4ヶ月遅れで成熟します。 多頭飼育の場合は♀が先に成熟してもそのままにしておきます。 マット上で前蛹体になってしまったら人工蛹室に移しましょう。 |
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12.蛹化 | ![]() |
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3齢幼虫が成熟してオレンジ色になってきたら蛹化用にケースをセットします。 蛹化用のケースは大プラケースに、粘土のようにこねられる位に加水した黒土をケース下部に1/3程出来るだけ固く詰めます。上部は通常の飼育用マットで埋めます。こうすることで成熟した幼虫が蛹室を造るのに適した土中を求め、ケース内を動き回りサイズロスをしてしまうのをある程度防ぐ事ができます。黒土だけではなく使用済みのマットなどを混ぜてもよいでしょう。 コーカサスオオカブトの飼育でこの部分がもっとも難しいので、どうしても暴れてしまうことも多いので、あせらずオレンジ色に成熟するまでしっかりとよいマットを与えておきましょう。 蛹の期間は約2ヶ月です。 |
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13.人工蛹室 | ![]() |
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マット上で前蛹体になってしまった、或いは観察の為取り出した場合、人工蛹室で蛹を管理する事になります。 造り方はミニコンテナに黒土を粘土のようにこねられる程に加水して、蛹より大きめになるように黒土をこねて蛹室を作成します。 蓋とケースの間に保湿シートを挟んで湿気を保ちます。乾燥が進むと黒土がひび割れしてしまうのでこまめに管理しましょう。 ※蛹はショックに大変弱いので、振動をあたえないでください。 |
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14.羽化 | ![]() この時点ではまだ前翅も柔らかいので、決して触ってはいけません。 |
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羽化した新成虫は2ヶ月近く蛹室に留まり、その後、活動を開始します。 羽化後2週間もしたら取り出しても大丈夫ですが、まだ衝撃にも弱くいじり過ぎると突然死する可能性もありますので、マットに埋めて静かにそっとしておきましょう。 |
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15.新成虫の飼育 | ![]() 大プラケースで3頭飼育だが定期的なマット交換をしていたので長角型が羽化した。単独飼育なら更に大型個体の羽化も可能。(他2頭は80mm前後) |
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コーカサスは大変気の荒いカブトムシで♂はもちろんのこと、♀も多頭飼育するとエサを奪い合って激しく喧嘩してバリバリ音を立ててボロボロになり産卵が困難になってしまうので、単独飼育が基本です。 ♂は2匹を一緒にしておくと1日でどちらかがバラバラになってしまいました。 |
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16.大型個体作出のポイント | ![]() 羽化した中で1番大きかった個体。 この個体も大プラケースで3頭一緒に飼育していた。 |
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大型個体作出のポイントとして主なポイントは以下の4点です。 1.少数飼育 2.1ヶ月毎の定期的なマット交換 3.フスマなどの添加物 4.オレンジ色に成熟したら蛹化用にセットし、蛹化を即す 幼虫を大きくすること自体は難しくないと思いますが成熟後、すんなりと蛹化してくれずケース内で暴れてしまうことが多く、その間の縮んでしまい、その為に大型をブリードされる方が少ないのではと思います。 |
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17.♂♀羽化ズレを防ぐポイント | ![]() 飼育下で♂♀の羽化は3、4ヶ月のずれが生じた。 |
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♂♀の羽化の誤差を縮める主なポイントとしては以下の3点です。 1.多頭飼育 2.マット交換は少なめ ※劣悪なマットなら尚良い。 3.♂♀選別はしない 小型化しますが羽化のずれは縮めることができると思います。しかし、まだ経験が少なく明確なことは言えません。ただマット交換を控えることで成長を遅らせつつ成熟を進められるのではと考えています。今後の飼育で明確にしたいと思います。 |
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★後の飼育で分かったこと コーカサスよりも更に羽化ズレが大きくなるヘラクレスオオカブトでも、♂♀別々に飼育してもエサに適さない菌床を長期間与えていたことで、長い間成長できず結果♂♀の羽化ズレが2ヶ月に抑えることができました。 ♂♀別々に飼育して♂は大型を狙う場合でも、羽化ズレを防ぐことは充分可能だということが分かりました。 とにかく♂には良いマットをどんどん食べさせ大きくして、♀は栄養価の少ないマットを長期間にわたって与えて成長を遅らせることで大型の♂が時間をかけて羽化したとしても♀も同じくらいで羽化させることが可能だと思います。 ただ、あまりに悪いマットを与えて死なせないように注意が必要です。 |
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以上、コーカサスの飼育で得た飼育法をご紹介いたしました。