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グラントシロカブト飼育記
Dynastes granti
産地:USA アリゾナ州
〜第3部 奇形編〜
 
 
 
3年前に幼虫を購入して以来、ブリードは2代目の個体になるが、少数飼育にも関わらず、なんと前胸背板が左右2つに分裂しているというなんとも珍しい奇形個体の♀が羽化しました。
もう2度と発生しないかもしれないこの貴重な奇形個体をブリードで増やしてどんな♂が羽化するのか確認したいと思います。
 

前胸背板が分裂している♀48mm


奇形誕生 奇形グラントの♀48mm@
白く色付いた。
前胸背板が完全に左右に分裂していることが分かる。
左右対称であることからも、遺伝子の突然変異で起こった先天的な奇形であることが分かる。
(2005.1.9)
12月12日
 ♂が蛹化して1ヶ月ほどで羽化し、数日前から活動を開始していたので、大プラケースに♀2匹と一緒に飼育することにした。
♂は黒点がほとんど無く、非常に綺麗だったので、ブリードを続けていきたい。♀2匹はすごい食欲で、後食を開始して2ヶ月くらいにはなっているので、成熟は十分だが、マットの質はあまり良くないのが心配ではある。
 今回は飼育の手間を省く為、♂♀一緒の飼育なので、成功するかどうか観察していきたい。
 
2005年1月1日
 残りの♀も羽化している頃だろうと、大プラケースに1頭残っていた♀を掘り出すことにした。
掘り出した♀はなにやらおかしく羽化不全か?とよく見てみるとなんと前胸背板が左右に2つある奇形個体であった!
まだ羽化後日が浅いらしく黒いが、前胸背板が2つあるという点以外、まったく正常で運動能力にも異常はなかった。
2つある前胸背板は左右多少の形状の違いはあるが、ほぼ左右対称で先天的な遺伝子の突然変異による奇形と思われる。
かなり稀なものであることは言うまでもないので、大切に管理して、出来れば繁殖させたいと思う。もし、遺伝すれば♂の場合、胸角が2本になる可能性もあり、大変興味深い。
中プラケースで単独で管理することにした。
※「Topics」グラントシロカブト奇形個体参照
 
1月5日
 産卵用ケースに♀と一緒に入れておいた♂73mmを奇形♀のペアとして隔離して体力を温存させておくことにした。
この♂がペアリングに間に合わなかったとしても、まだ数頭の幼虫がいて、蛹になっているようなので、恐らく大丈夫だと思う。

1月9日
 奇形の♀が白く色付いたので、写真撮影をした。
♀はいたって元気で、ケースから取り出すとみるみる白く色付いていった。
この前胸背板が2つに分裂してしまうという大変稀で貴重な奇形個体をブリードで増やし、改良品種として固定し、完全な血統としていきたいと思っている。
奇形グラントの♀48mmA
大変元気で、ブリードは可能と思われる。
♂73mmと交配させて♂の奇形個体を誕生させる予定。
(2005.1.9)

  種親の♂73mm
黒点のほとんどない綺麗な♂を奇形♀との交配に使う。
(2004.12.12)

後食開始
1月26日
 奇形の♀が後食を開始した。
よくゼリーを食べているが、頭部は下に曲げられないようだった。
 
交尾
1月29日
 去年の11月に羽化した使用済みの♂73mmの寿命が心配なのと、奇形の♀がコロっと死んでしまうのでは?という不安から、少し早めだが、交尾させることにした。
♂はあまり元気がないように感じたが、♀の上に乗せてしばらく待つと交尾を始めた。
交尾を開始してから2時間半以上してやっと交尾が終了した。
奇形♀との交尾@
奇形の♀なので、交尾が成立するか心配だったが、すんなりと交尾してくれた。
(2005.1.29)

  奇形♀との交尾A
ほぼ確実に交尾を成功させることができた。
(2005.1.29)

産卵用セット
1月29日
 交尾が終了した奇形の♀は産卵用にセットした大プラケースに入れた。
大プラケースは今回から評判のよい月○野き○こ園のものを使用、ケース下部5,6cm固めに詰めて、ケース7分目まで軽く入れた。
産卵促進になればと、硬くて使用しなかった小さめのコナラ材を半分埋めてみた。
今回は♂の寿命も考慮して、♀の成熟にほとんど時間をかけなかったのが少し心配ではあるが、ブリードは簡単なカブトなので産卵は可能だと思う。
 
産卵
1月31日
 今日は気分が悪く、帰宅してすぐに横になったが、ふとそばにあった奇形♀の産卵ケースを引き出してケース下部を横になったまま見てみると、なんと真っ白い卵が1個確認できた。
うれしすぎて飼育記を更新してしまった次第である。
交尾も完全に成功していたので、まず累代飼育は成功することであろう。
 
種親♂死亡
2月2日
 ♂73mmが死んでいた。恐らくこの前の交尾で体力を使い果たしたのだろう。
他に♂はいない(まだ♂の蛹がいるかもしれない)ので、この♂がいてくれて本当によかった。
 
最後のF3新成虫 羽化
2月3日
 まだ蛹だろうとほっといてあった3頭の幼虫を飼育していた大プラケースから何か動くものが見えて、見てみるとペアが歩き回っていた。
急いでそのままゼリーをセットしてやった。どちらにしても、奇形♀のペアリング用の♂の心配は不要であった。
 
2月5日
 成虫を取り出してみると♂が80mmもある大型個体で、♀も2匹でブリードには最適な組み合わせだった。
幼虫時の劣化したマットを掘っているとなんと卵が出るわ出るわで45個も採れてしまった。マットは劣化してグチョグチョの状態だったのだが、マットにこだわらないのか、こういうマットのほうがよいのか定かではない。
国産もそうだが、グラントも羽化後後食なしでも繁殖が可能らしい。
採れた卵は無性卵ばかりということも考えられるが、♂も活発に活動していたので有精卵も混じっていることであろう。
採った卵はプリンカップ大1個に45個セットした。
このグチョグチョマットを少し混ぜて、新品のマットで産卵用ケースをセット、ペアリングも兼ねて♂1匹・♀2匹を一緒に飼育することにした。
 
F3:♂80mm@
80mmの大型個体。
(2005.2.5)

  F3:♂80mmA
黒点はあるが、大変小さい。
(2005.2.5)

産卵用ケース再セット
2月5日
 奇形♀の産卵用ケースは卵を確認して以来、♀がケースの底をかき回しているようで、卵はすぐに隠れてしまっていた。
いきなり幼虫用ケースで爆産していた時のマットが劣化した粘土のようなグチョグチョしたマットだったので、今度は奇形♀でもそのマットを少し新品のマットに混ぜて2個目の産卵用ケースをセットした。
1個目の産卵用ケースは孵化率UPのため、1ヶ月ほどそのままにしておく。
 
奇形♀死亡
3月8日
 奇形の♀が死んでいた。触覚がカビていたので、死後数日経っているようだ。
1個目のケースはまだ採卵していないが、産卵期間が1週間なので、1ヶ月間産卵させた2個目のケースにたくさん産んでいるのではと思っている。
1個目の産卵ケースは近日中に採卵したい。
 
採卵
4月16日
 そろそろ採卵してみることにした。
1ケース目は産卵期間を1週間しか取らなかったので、期待していなかったのだが、マットを開けてみると卵が無い。
よく見ると卵がしぼんで溶けてしまっているようであった。
2ケース目も開けてみると、産卵した穴はいくつもあるのだが、中にあるのはしぼんだ卵ばかり。しかし、2個だけ丸く黄色っぽい卵を発見した。
2個の卵は腐る気配もなく、楕円ではなく丸いので孵化する可能性がある。
腐ってしまった卵はやはり、遺伝的に異常なため、受精できなかった可能性が考えられる。
少々期待が外れてしまったが、この2個の卵が採れただけでも、よしとしよう。
卵はプリンカップにセットして、孵化を待つことにした。
奇形グラントが産んだ卵
90%以上の卵が溶けてしまったが、この2個の卵は丸く、黄色く色付いており、孵化する可能性がある。
(2005.4.16)

  しぼんでしまった卵
多数産卵してくれたのだが、遺伝的に異常なため、受精できなかったのか?このようにしぼんでしまった。
(2005.4.16)

孵化 孵化
遂に奇形グラントが産んだ卵が孵化した。
(2005.5.15)
 
5月15日
 多数産卵したにも関わらず、腐らなかった卵は2個だけであったが、そのうちの1個が孵化していた。
幼虫さえ採れれば成虫なれる可能性は非常に高い。
どんな成虫になるか楽しみである。
残り1個の卵も腐る様子はないので、孵化してくれると思う。
幼虫飼育 奇形グラントから生まれた1齢幼虫
まったく正常で、通常の幼虫との区別はまったく付かなかった。
最近買った高価な一眼レフデジカメで撮影したので、大きく見えるかもしれないが、実際にはココと同様小さい。
(2005.5.21)
 
5月21日
 孵化した1頭をプリンカップから取り出し、プリンカップ大で幼虫飼育を開始した。
残り1個の卵はまだ孵化しないが、腐る様子もないので、時期に孵化してくれると思う。
 
 2月5日に正常個体の新成虫を取り出した時に、マット内に既に産卵して多数の卵を採ることができたが、今日その卵を管理していたプリンカップを開けてみたところ、10数頭の幼虫を採ることができた。
まだ卵もあるが、1つのプリンカップに多数の卵を入れすぎたためか先に孵化した幼虫に卵を食べられてしまうことがあるようで、残った卵はあまり多くなかった。
しかし、これでグラントも後食する前から繁殖が可能だということが判明した。
卵の期間が長いというだけで、繁殖力は国産カブト並みである。
3齢幼虫 奇形グラントから生まれた3齢幼虫
奇形から生まれた幼虫だが、まったく異常が見られず、順調に成長している。
(2005.7.23)
 
7月23日
 
唯一孵化した幼虫は順調に成長し、3齢幼虫になっていた。
ケース交換を兼ねて、気になる雌雄を判別したところ、見事♂であった。
当初、まともな卵は2個あったが、孵化したのはこの1頭のみで、残りの1個は腐ってしまった。多数産卵してほとんど腐ってしまったことと、明らかに有精卵で卵が成長していたにも関わらず孵化せずに腐ってしまったことからも、奇形個体の繁殖は非常に困難なことが分かる。
今回は、運よく1頭得られたと考えたほうがいいようだ。
それも♂だということが分かり、前胸背板が2つに分かれてくれるか、それとも正常な個体として羽化するのかは分からないが、奇形になった際、♂の場合はどうゆう姿になるのか今後の飼育にますます期待が高まる。
 
奇形の3齢幼虫は形やサイズも通常のグラントの3齢幼虫とまったく変わらず、見分けがつかない。
より大型にするため、中プラケースで単独飼育をすることにした。

マット交換 成熟した3齢幼虫(38g)
まったく問題なく、大きくなってくれた。
(2006.3.11)
 
2006年3月11日
 前回、正常なグラントの幼虫が特大蛹になったとお知らせしてしまったが、これは捨てマットから出てきてグラントの幼虫と思い込んで管理人用として飼育していたもので、オキシとなって羽化しました。大変お騒がせしてしまい、申し訳ありませんでした。
奇形幼虫は今までの間、減った分のマットを追加するくらいの管理をしていたが、今日は奇形幼虫のマット交換をした。
幼虫は大きく成長しており、38gで黄色っぽくなっていた。
マット交換し、中プラケースで飼育を続行した。
 
羽化 無事に羽化することができなかった死骸
前胸部と頭部は正常な♂で、腹部は肉の塊で悪臭を放っていた。
(2006.7.17)
 
7月17日
 6月中に他のグラントと同様、蛹室を造り、ケース側面から蛹を確認できていたが、既に羽化している時期なので、取り出してみることにした。
取り出してみると、前胸部および頭部は立派な♂なのだが、腹部は肉の塊で悪臭を放っており、既に死亡していた。
他のグラント達はすべて完品で羽化していることから、この個体が羽化できなかったのはやはり遺伝的に異常だったためと考えられる。
ただ、遺伝的に異常であるのだが、羽化というステージまでは、他の正常個体とまったく同様で順調に成長していた。
残念ではあるが、今回の飼育では、前胸背板が分離した奇形から同じ個体が出ることはなく、遺伝的に累代は困難なことが分かった。しかし、複数の幼虫が得られていればまた異なる結果になっていたことも十分に考えられる。
 
 
 

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