トゲナナフシ飼育記
Neohirasea japonica
 
何年もカブクワを飼育してるとさすがに飽きがきてしまいました。
それで、興味がエビや観葉植物などいろいろ目移りしている中で、偶然、見つけたトビナナフシを撮影して少々調べてみるうちに特殊な生態に興味を惹かれ、飼育したくなったので、トビナナフシと同時に見つけたトゲナナフシの飼育にもチャレンジすることにしました。
 

 
採集
2005年8月30日
 突然庭に現れたトビナナフシを撮影以来、ナナフシの特殊な生態に興味を惹かれ、飼育したくなったので、採集してみることにした。
トビナナフシを採集しようと懐中電灯で散策を始めようとしたところ、玄関を出たすぐのところから生えているヤツデのそばのコンクリートブロックの壁にトゲナナフシが止まっているのを発見した。
過去、トビナナフシを捕まえようとしてすぐに足を切断されてしまったことがあったため、トゲナナフシも自切するかもしれないので、手で掴まず、ケースに落とすようにして採集した。
夜遅くなってしまったので、一緒に採集したトビナナフシの幼虫とともに2Lブロー容器に入れて、明日飼育ケースをセットすることにした。

 
飼育
8月31日
 トゲナナフシを飼育するため、帰宅途中に100円ショップで飲料水入れ(冷水筒)とヤツデの葉が枯れないようにとガラス製の小さい水入れを買ってきた。
飲料水入れは縦長で植物を入れなければならないナナフシの飼育にはもってこいだと思う。
ケース下部にピートモスを敷き、ガラス製の水入れに水を入れ、エサとなるヤツデの葉を入れたが、大型のナナフシなのでまず水入れに落ちることはないだろうが、一応脱脂綿を入れてガードした。通気穴は熱したコンクリート針で複数空けた。
トゲナナフシの体長を測ってみると70mmほどもあった。
トゲナナフシをケースに入れてみると、思惑通りヤツデの葉に乗っかり、擬態ぎたいしていた。
 
 夜、寝る前にもう一度見てみるとヤツデを食べているところを観察できた。しかし、見た途端、すぐに食べるのを止めて静止状態になってしまった。
警戒心が強いようである。
 
9月1日
 朝、産卵していないか注意深く観察してみるとヤツデの葉の上に糞と一緒に丸っこいものが乗っかっているのを発見した。
トビナナフシの卵のような特徴はなく、丸いだけだったが間違いなく卵であった。
葉も少し食べられていたが、あまり多くなく、採集した日から一食抜いていたことを考えると少食なようである。
 
 夜、帰宅後、卵を採取することにした。 葉の水分でかなり濡れてしまっていたが、昨日からトビナナフシの卵を管理しているプリンカップに入れた。
卵が一緒になっても、すぐに判別できるので、トゲナナフシ専用のプリンカップは休日にセットしたい。

 
トゲナナフシの飼育ケース
比較的若いヤツデの葉を入れてみた。
(2005.8.31)
  ケース内のトゲナナフシ
警戒心が強いようで、いつも擬態している。
(2005.8.31)
一日後のケース内
右の葉が食べられているのが分かる。
(2005.9.1)
  トゲナナフシの卵
飼育開始、1日で卵を1個採ることができた。2mmほどと大変小さい。
落ちずにヤツデの葉に乗っかっていた。
(2005.9.1)
産卵、死亡、そして採集 採取した卵@
撮影後、更に1個採取し、合計14個の卵が得られた。
卵は2mmほどしかなく、大変小さい。よく見ると楕円をしており、蓋も確認できる。孵化時にこの蓋がパカっと開いて、幼虫が出てくるらしい。
(2005.9.2)
9月2日
 朝、見てみるとマット上にバラバラと複数の卵を確認することができた。
昨日は1個だけだったので、ひとまず安心した。
トゲナナフシは葉を食べた様子がなく、相変わらず擬態していた。
 
 夜、帰宅するとなんとトゲナナフシがマット上で死んでいた。あまりに早い死にショックを受けた。
食草となるヤツデも入れていたし、ケース内は蒸れている様子もなかった。卵が得られたとはいえ、もう少し飼育をしたいので、また探してみるとトゲナナフシが玄関をすぐ出たところのブロック塀に止まっているのを発見した。
これも同じくらいのサイズで、成虫のようであった。トゲナナフシはたびたび見かけてそれほど珍しいナナフシではないにも関わらず、幼虫を見た試しがない。
コナラも見てみるとトビナナフシの成虫が懸命にコナラの葉を食べているのを見つけたが、トゲナナフシと同時期に2匹の成虫を飼育中なので、採らなかった。
 
 採集したトゲナナフシをケースに入れる前に、ケース内にある卵を取っておくことにした。
卵は2mmほどと小さく、細心の注意を払って1個ずつ丁寧に採取した。
数えてみると昨日取った卵1個と合わせて14個得られた。
取った卵を管理するため、プリンカップにピートモスを敷き、その上に卵をばら撒き、セットした。
採取した卵A
まるで植物の種のような卵である。親は枝に、卵は種にとカモフラージュに徹している昆虫である。
(2005.9.2)
  プリンカップにセットした卵
マットは衛生面と保湿面から、園芸用のピートモスを使用した。
孵化は来年まで待つことになるのだろうか?
(2005.9.2)
9月10日
 生きてはいるようだが、始終ケースの下のほうでじっとしている。動きも大変鈍い。
弱っているのかと心配しているが、夜のうちに葉が食べられているので一応大丈夫なようだ。
蓋を開けてみると内部が温かみを感じるので、通気が足りないようであった。
エサのヤツデの葉の交換も兼ねて、蓋を開けて通気のためしばらく放置している間に昆虫撮影に熱中してしまい、すっかりトゲナナフシのことを忘れてしまい、数時間後に見てみると逃げてしまっていた。探し回っても見つからなかったが、玄関に置いていたので、下駄箱の裏にでも潜んでいるかもしれない。
 
9月12日
 
休日中は見つからず、朝、出勤しようとドアを見たところ、トゲナナフシが止まっていた。
トゲナナフシをケースに入れて一安心した。通気は考えないといけないがだいぶ涼しくなってきているので、このままでも大丈夫そうである。
 
採卵&飼育状況 2匹目が産卵した卵
マット上に多数の卵が産み落とされており、かなり長期間糞と一緒になってしまったので、無事に孵化してくれるか少々心配ではあるが、まず大丈夫だと思う。
(2005.10.29)
10月29日
 休日は「虫navi」サイト製作のため、野外で昆虫撮影に専念しており、飼育のほうがおろそかになってしまい、2週間に一度坊主になったヤツデを交換する程度の管理しかしていなかったのだが、寒くなった今でもトゲナナフシは元気にしている。
マット上に多数の卵が落ちたままになっており、糞と一緒に長期間置いた状態になって衛生的によくないので、採卵することにした。
 
マット上の卵を1個ずつ取る作業は非常に面倒であったが実に110個以上の卵を採卵することができた。
かなりラフな飼育でもこのように多数産卵させることができ、飼育はいたって簡単なようである。
採卵した卵は湿度を保つため、プリンカップ内で管理することにした。
 
ついでにトゲナナフシの記念撮影もおこなった。新しい一眼レフデジカメでトゲナナフシの成虫の撮影をするのは今回が初めてであった。
トビナナフシではよく足を自切されてしまい、ナナフシの取り扱いには気を使うようになってしまったが、本種は自切しないのでは?と思い、寿命も近いこともあり、普通に掴んでみるとまったく足を自切しなかった。本種では自切しない、或いはトゲナナフシほど敏感に自切しないようである。
この種親は寿命も近いと思われ、しかも夜は冷え込むようになっているがまだエアコン管理はしていないのだが、未だにいたって元気にしている。
種親のトゲナナフシ@
寒くなってもいたって元気である。
気が付くといつもケース内のヤツデを坊主にしている。
(2005.10.29)
  種親のトゲナナフシA
(2005.10.29)
野外のトゲナナフシ 草陰に隠れていたトゲナナフシ
近くにヤツデがあり、日中は草陰に身を潜め、夜にヤツデを食べているようである。
(2005.11.1)
11月1日
 最近寝不足気味で体調が優れなかったため、久しぶりに休暇を取った。
しかし、毎週休日は天気が悪いというのに、雲一つ無い秋晴れで、もったいないので庭で昆虫を散策していると、ブロック塀に垂れ下がっているツユクサに似た植物の陰にトゲナナフシを発見した。
そのトゲナナフシは中足が両方ともなく、前足の先端も欠けていて、寿命が近い年寄り個体のようであった。
更に同じ植物の陰を探していると、今度は完品のトゲナナナフシを発見した。
近くに食草となるヤツデがあり、隠れている草を食べているのではないようなので、日中はこういった植物の陰に身を潜めて、夜に活動しているようである。
飼育中の本種と比べると明るい茶色で、飼育ケースは湿度が高いので焦げ茶色になってしまっているのがよく分かる。
尻を持ち上げたトゲナナフシ
触ると尻部を持ち上げた。威嚇の効果があるのかもしれない。
(2005.11.1)
  草陰に隠れている中足の無いトゲナナフシ
最初に見つけたこの個体には中足が両方とも無かった。
(2005.11.1)



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