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トカラノコギリクワガタ
Prosopocoilus dissimilis elegans
産地:悪石島

 
 
本種は南西諸島の悪石島、中之島、口之島、諏訪之瀬島、臥蛇島に分布、
各島ごとに体色・大きさが多少異なる。
1番大型が期待できるのは中ノ島産だが体色にバラつきがあるので、
オレンジ色が安定して出ている悪石島産を飼育することにしました。


悪石島WILD:小型ペア



種親購入
2001年8月19日
 DRE○Mより採集品である悪石島産トカラノコギリクワガタ(以下トカラノコ)の小型の1ペア(♂36mm・♀30.5mm)を購入した。

ペアリング&産卵用ケース
 ノコギリクワガタでは♀殺しは無さそうなので、中プラケースで♂・♀一緒に飼育することにした。
マットは幼虫飼育に使ったクヌギマットを下半分、上半分は新しいクヌギマットを半々に混ぜたマットを入れ、コナラ材を斜めに埋めた。
本土ノコ同様トカラノコもマット産みだと思うので、粒子の細かいマットが適していると思う。

WILD:種親♂36mm

 

WILD:種親♀30.5mm

産卵
8月20日
 早くもケースの底から卵が1つ確認できた。
やはり本土ノコ同様プラケース面に産み付ける性質があるようだ。
8月22日
 ケース側面と底面に計6個の卵が見えた。

採卵
8月24日
 8個の卵を採った。卵は人工孵化の為、プリンカップに使用済み幼虫用マットを詰め、セットした。
9月9日
 5個の卵を採った。

孵化
9月5日
 2頭孵化した。1頭はまだ真っ白で孵化直後だった。
9月6日
 3頭孵化した。
9月7日
 2頭孵化した。
9月9日
 2頭孵化した。
9月20日
 4頭孵化していた。
9月24日
 1頭孵化していた。これでプリンカップにセットした卵13個は全て孵化し、孵化率100%という好結果だった。



 

1齢幼虫

幼虫飼育
 人工孵化させた1齢幼虫は孵化後すぐ又は3日以内に1Lのガラスビンに1頭ずつセット。クヌギ小麦粉発酵マットを使用した。約3ヶ月毎にマット交換をした。
9月24日
 脱皮直後のまだ頭の白い2齢幼虫を確認できた。

種親死亡
11月8日
♂36mmが死亡していた。♀もここ数ヶ月姿を見ていないので既に死んでいると思う。

幼虫採取
11月18日
マットより2・3齢幼虫が13頭取れた。中プラケースに小麦粉発酵マットを詰め、13頭一緒に飼育することにした。種親の♀はやはりマット中で死亡していた。

3齢初期の幼虫@
(2001.11.2)

 

3齢初期の幼虫@
(2001.11.2)

3齢幼虫

3齢幼虫@
(2002.2.2)

2002年2月2日
3齢幼虫がかなり大きく成長した。
♀は♂より少なかった。
3月10日
3齢幼虫が更に大きくなった。本土ノコでの経験からすると60mm後半位にはなると思う。
幼虫飼育は特にこれといった工夫はしていないが、乾燥だけには注意している。

3齢幼虫A
(2002.3.10)

 

3齢幼虫B
(2002.3.10)

中プラケースのマット交換@
3月17日
中プラケースで飼育している13頭はすべて3齢幼虫になっていてかなり過密状態だったので幼虫を取り出してみた。数えると12頭で1頭はいなかった。過密が原因による事故だろう。ちなみに11月18日にセットしてから1度もマット交換はしていない。
大きめの♂3頭を1Lビンに移し、中プラケース9頭で飼育することにした。

♀蛹化
4月22日
♀が蛹化した。
6月4日
♀が蛹化した。(2頭目)
6月9日
♀が蛹化した。(3頭目)
6月27日
♀が蛹化した。(4頭目)。しかし、頭だけ脱皮できず、蛹化不全だった。
前蛹体の時から頭と体の境目が黒くなっていた。
6月30日
♀が蛹化した。(5頭目)
7月13日
中プラケースで飼育していた♀がやっと蛹化した。他の個体も大部分が前蛹体になっている。

♀羽化
5月24日
♀が羽化した。ちなみに9月8日に飼育開始したものです。
6月27日
♀が羽化した。(2頭目)
7月3日
♀が羽化した。(3頭目)
7月15日
蛹化不全の♀が羽化した。(4頭目)やはり羽化不全だった。頭は幼虫のままである。
7月19日
♀が羽化した。(5頭目)

中プラケースのマット交換A
6月28日
中プラケースで多頭飼育している9頭のマットが線虫の発生により著しく劣化していたので、幼虫を1頭ずつ400mLのガラスビンに移した。マットは埋め込みマットを使用した。
ビン飼育のものはほとんど蛹室を造って蛹化又は羽化待ちであるのに中プラケースのものはなぜか蛹室を造っているものは1頭もいなかった。

♂蛹化


(2002.7.6)

6月25日
♂が蛹化した。
7月2日
♂が蛹化した。(2頭目)
7月3日
♂が4頭蛹化した。(3〜6頭目)
うち2頭はビン上部で既に蛹になっていた。
7月8日
♂が蛹化した。(7頭目)
これまで蛹化・羽化したものはすべてビン飼育のものである。
ビン飼育の蛹化待ちの個体は残り1頭のみになったが、まだ前蛹体だがかなり大きい。ギネスサイズを狙えそうでかなり楽しみ。
7月15日
ビン飼育最後の♂が蛹化した。(8頭目)

蛹取り出し
7月6日
ビン上部で蛹になっていたものが2頭いたので取り出し易いので出してみることにした。
蛹室はほとんどビン全体を使っていてなぜか丈夫ではなかった。他のクワガタでは蛹室内側は滑らかに固められていてツルツルしているのに対し、ただマットを軽く固めたような感じだった。他の蛹室も同様みたいだった。
取り出した蛹はミニコンテナで黒土で造った人工蛹室(去年使ったもの)に移した。

ビン上部で蛹化
(2002.7.6)

 

蛹室上部を取り除いたところ
蛹室はビン全体を使っていた
(2002.7.6)

取り出した蛹
まだ大顎が半透明
(2002.7.6)

 

人工蛹室にセット
(2002.7.6)

7月17日
人工蛹室の蛹が1頭、色付いていて羽化直前のようだ。
7月19日
6月25日に蛹化した♂の蛹室内にコバエが大量に沸いていて、このままでは羽化不全になると思い、人工蛹室に移した。

♂の羽化
7月18日
人工蛹室の蛹が羽化した。
大体60mm中盤位のようだ。
7月20日
人工蛹室の蛹が羽化した。
7月24日
♂が羽化した。
7月25日
♂が羽化した。
7月26日
♂が2匹羽化した。
7月29日
また羽化直前の蛹室にコバエが大量発生してしまった。
人工蛹室に移した。
7月30日
昨日移した蛹が羽化した。少し前翅にへこみが出来てしまった。
8月6日
ビン飼育最後の1頭が羽化した。一番大きそうだ。

羽化の連続写真
2002/7/20 PM4:37
羽化直前の蛹

7月20日
昨日、蛹室内にコバエが大量に発生して、人工蛹室に移した♂が羽化した。6月25日に蛹化したので蛹の期間は約1ヶ月であった。
羽化の様子をデジカメで撮影した。

2002/7/20 PM7:48
羽化@
中足を動かし腹部を回転させ、仰向けになろうとしている

 
2002/7/20 PM8:36
羽化A
前胸部の中央から脱皮を始めた


2002/7/20 PM9:25
羽化B
抜け殻を腹部に隠し、後翅を伸ばした

 
2002/7/20 PM11:11
羽化C
頭部が持ち上がってきた


2002/7/21 AM2:56
羽化D
後翅を完全に畳んだ


 
2002/7/21 AM8:34
羽化E
ほぼ完了


新成虫

新成虫F1:♂67mm@
(2002.7.26)

7月26日
 最初に羽化した♂を人工蛹室から取り出した。
7月18日に羽化してからずっとひっくり返った状態だった。
体長は67mmだった。
まだ未熟でそのまま休眠に入ると思うので中プラケースに埋め込みマットを8分目程入れ、マットの中に埋めた。

7月27日

 既に羽化している♀を3匹取り出した。種親同様赤褐色の個体だった。
同じ中プラケースに移したが、結構気が荒かったので、単独で管理したほうが良いかも知れない。

新成虫F1:♂67mmA
(2002.7.26)

 

新成虫F1:♀36.5mm
気が荒く、2回親指を噛まれてしまった。
(2002.7.27)

羽化不全

羽化不全の♀、頭部は幼虫のまま。
(2002.7.28)

7月28日
蛹化・羽化不全だった♀を取り出した。
頭部は幼虫のままだった。後足も両足共後ろ向きに付いており、先天的な奇形かも知れない。
だが、管理表を見ると♀なのでマット交換を半年間していなくてそのままにしてあったものだった。
その後、♂1匹軽度の羽化不全が発生した。その個体も多頭飼育後、埋め込みマットで蛹化させたものだった。
よって、マットの養分が少ないと蛹化も遅れ、羽化不全になる確率が高くなることが分かった。

新成虫取り出し

取り出した新成虫
体色は安定していてバラツキはなかった
(2002.8.13)

7月27日
羽化して1,2ヶ月経っている♀3匹を取り出した。
35〜36.5mmだった。休眠すると思うので、中プラケースにマットを8分目まで入れ、埋めてやった。

8月13日

羽化したビン飼育の♂を最後に羽化した1匹以外の7匹全て取り出し、体長を測定した。
全て66mm〜67mmで67mmが一番多く5匹いた。
♂は皆オレンジ色で安定していた。♀は♂に比べ地味な色だった。
♂はミニコンテナで1匹ずつ管理した。

F1:中歯型の♂53mm
多頭飼育後、単独で蛹化させたもの。短歯型も羽化した。
(2002.10.5)

 

F1:短歯型の♂46mm
多頭飼育後、単独で蛹化させたもの。ビンも小さいものでマットも埋め込みマットを使用。栄養が足りない為、蛹化が大幅に遅れた。小型の♂はこの1匹のみ羽化した。
(2002.10.5)

♀活動開始
7月30日
♀が1匹マット上に出て活動していた。
皿木とゼリーをセットしてみた。
8月11日
更にもう1匹も活動を開始した。ゼリーもかなり食べている。
トカラノコは休眠はしないのか?

♂活動開始
8月21日
7月20日までに羽化した♂2匹が活動していた。ゼリーをセットした。

ペアリング&産卵
8月31日
♀だけ入れていたケース底面に卵が見られたので、急いでペアリング&産卵用ケースを複数セットした。
9月15日

13個採卵した。
♂に挟まれ瀕死の♀も見られたので、ペアリング後は♀単独で飼育したほうがいいようだ。
瀕死の♀の産卵に面白い傾向がみられた。卵が2つくっ付いた状態で2個づつ産み付けられていて、その卵は数日後、解けてしまった。
9月22日
夜、冷え込むようになって産卵しなくなってしまった。夜はエアコンで27℃前後に温度管理することにした。
9月24日
温度管理するようにしてからまた産卵を始めた。
9月15日に採った卵が孵化を始めた。

まとめ
 孵化まで確認できた時点で飼育記を終了したいと思います。
70mmUPとまではいきませんでしたが、多数の綺麗な大型個体を羽化させることができて大変満足しています。
また、全ての♂成虫に綺麗なオレンジ色の体色が出て、♀は全て赤褐色でした。
本土ノコギリに見られるような羽化後の休眠も無く、羽化後、1〜2ヶ月後には活動、産卵が可能でした。
まったく飼育対象として言うことが無いです。ただ、本土ノコギリに比べかなり気が荒いのでペアリング後は♀単独で産卵させることをお勧めします。

新たに分かったこと
 後になって分かったことですが、トカラノコは羽化する時期で羽化した年に活動するタイプと翌年の活動期まで越冬するタイプがあることが分かりました。
単独飼育で7月中に羽化(1匹だけ8月6日に羽化)した成虫はすべて約2ヵ月後に活動開始、多頭飼育で栄養状態が悪く羽化が遅れほとんど8月中に羽化した個体はそのまま後食することなく休眠しています。
トカラノコが休眠しないことさえ知らなかった人が多く、貴重なデータになると思います。
本土ノコギリクワガタは羽化が早くても遅くても例外なく休眠しているので、面白い相違点だと思います。
2003年6月下旬
 8月以降に羽化して越冬していた個体が活動するようになった。
7月13日
 ペアリングケースをセットしようと♀をケースにいれたら、なんとその場で卵を産んでしまった!!
その後、セット以来ケースの下部や側面から多数の卵が発見できた。F2個体も30頭ほど飼育しているが、♀はほとんど羽化し、♂は1頭羽化したものもあるが、他はやっと蛹になりはじめたところである。

F2成虫の70mmオーバー
2003年9月6日
 今回はフスマ発酵マットを試してみたのだが、飼育数が多かったこともありマット交換をおろそかにしたこともあって、尻が出た個体が複数出てしまった。
しかし、8月10日に羽化した♂はなんと70.5mmもあった。厳密にはもっとあり71mm程の大きさだった。
多少前翅にへこみがあるが、ほぼ完品だった。
ちなみに今日は第2回プレゼント企画の商品として新成虫ペア♂69mm・♀37mmをお送りした。
やはりプレ企画でもトカラノコがダントツ人気だった。

F2:新成虫の♂70.5mm@
悪石島産としてはかなり大型の個体だ。
(2003.9.6)


  F2:新成虫の♂70.5mmA
抑えなくても70.5mmあり、本当は71mm近くに達している。
(2003.9.6)

 


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