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ノコギリクワガタ
Prosopocoilus inclinatus inclinatus
産地:静岡県河津町
 
 
本種は日本全国に分布する普通種ですが、湾曲した水牛のような大顎や赤や黒の体色、
小型から大型までの大顎の極端な変化などに魅力を感じ、
今でも国内外産のクワガタの中で最も気に入っています。
伊豆旅行で多数の本種が得られたので、累代飼育に挑戦する事にしました。


ノコギリクワガタ♂66mm(静岡県河津町産・WF1)



採集
2000年7月11日
 伊豆でノコギリクワガタを採集した。
日中、クヌギ林でクヌギを蹴り、落ちてきたものを採集、多数の♂を採集できたが、♀は2匹しか採れなかった。♂は最大で61mmだった。
ミヤマクワガタは更に多く採集出来た。

最も大きかった♂61mm

 

採集地のクヌギ林
クヌギを蹴ると本種とミヤマクワガタがバラバラ落ちてくる

飼育開始
7月13日
 中プラケースにコナラ材1本をマットに9分目位まで埋め、♂1頭・♀2頭を入れた。♂は大型もいたが♀が小型(27mmと28mm)だったので中型の♂58.5mmを入れた。
本種はマット産みなのでマットは目が細かく固め易いものが良いと思い、黒土とクワガタ幼虫飼育に使ったクヌギマットを半々に混ぜたものを使用。
体色の赤いものが好きなので赤いもの同士ペアリングさせたかったが、♀は2頭しかいない(うち1頭は真っ黒)ので、幼虫を得たいので2頭とも使うことにした。

産卵
7月28日
 材の下部のケース側面から卵が3個、観察できた。

採卵
8月6日
 材の下部のマットを中心に7個採卵した。思ったより少なかった。
以後、9月24日まで19個の卵を採取した。

産卵用ケース

 


プラケース面とマットの境目に産み付けられていた

人工孵化
 採取した卵はプリンカップにクヌギ発酵マットを詰め、側面に箸で穴をあけて卵を入れ、埋めた。
結局、19個の卵から14個の卵が孵化した。

幼虫飼育
8月13日
 孵化した幼虫はすべて1頭ずつ1Lビンの小麦粉発酵マットで飼育した。2〜4ヶ月後に1度マット交換をした。小型の♀幼虫はマット交換はしなかった。
 飼育温度は、夏場は30℃を超えない程度、冬場は、18℃を下回らないように管理した。

1齢幼虫

 

3齢幼虫

種親死亡
9月2日
 赤褐色の♀28mmが死亡してしまった。
10月8日
 黒色の♀27mmも死亡した。
10月14日
 ♂58.5mmも死亡した。思ったよりかなり永く生きてくれた。

幼虫の様子
2001年2月13日
 元気だった♂の3齢幼虫が真っ黒くなって死んでいるのを発見。原因は不明。
それ以外の幼虫はみな問題なく元気だった。
4月11日
 5,6頭の♀幼虫が蛹室を造っていた。

3齢幼虫

 

マット交換時の3齢幼虫

♀の蛹化
4月24日
 ♀幼虫が1頭、蛹化した。以後、合計7頭が♀の蛹になった。

♂の蛹化

♂の蛹

5月8日
 ♂幼虫がかなり大きめの蛹になった。以後、合計6頭が♂の蛹になった。
5月13日
 最初に蛹化した♂を撮影の為取り出し、人工蛹室で管理した。
人工蛹室はミニコンテナに黒土で作成した。

♀の羽化
5月18日
 最初に蛹化した♀が羽化した。36mmだった。赤かったが約1ヵ月すると黒っぽくなってしまった。

♂の羽化

羽化直前の♂の蛹

6月2日
 人工蛹室の♂の蛹が色付き、成虫が透けて見えていた。
午前3時前、遂に羽化が始まった。


2001/6/3 AM2:46
羽化@
人工蛹室の蛹が動き出し、うつ伏せになった。

 


2001/6/3 AM3:00
羽化A
前胸部の中央から縦に皮が裂け始めた。


2001/6/3 AM3:20
羽化B
白い前羽が脱皮。

 


2001/6/3 AM3:29
羽化C
前羽がだんだん伸びてきた。


2001/6/3 AM3:40
羽化D
縮んでいた前羽が完全に伸びた。

 


2001/6/3 AM3:55
羽化E
柔らかい後羽を伸ばす為(?)、後ろの脱皮した皮を後足で引き寄せ、腹部に隠した。


2001/6/3 AM4:31
羽化F
後羽が完全に伸びた。

 


2001/6/3 AM6:17
羽化G
前羽がクリーム色に色づいた。


2001/6/3 AM7:07
羽化H
折れている頭部を持ち上げようとしている。

 


2001/6/3 AM8:11
羽化I
頭部がだいぶ持ち上がった。


2001/6/3 AM10:59
羽化J
前羽がオレンジ色になり、大顎も上がりだした。

 


2001/6/3 PM1:43
羽化K
後羽を折りたたみ、完全に前羽に隠れた。
大顎も前方に伸びた。


2001/6/4 PM5:09
羽化L
体色がだいぶ色づいた。

 


2001/6/6 PM6:51
羽化M
体も硬くなり、体色も落ち着いた。(体長66mm)

♂は6頭すべて大型だった。
去年数種類のクワガタに使用したマットを一緒にして保管しておいたら、種類不明のクワガタの1〜2齢幼虫が8頭出てきたので、コーヒーのビンでマット無交換で飼育したところすべて小型のノコギリクワガタになっていた。
結局、合計♂12頭・♀9頭の成虫が得られた。

新成虫
♂は最大で67mm、♀は最大で38mmだった。
♂1頭が羽化不全だったが、その個体のマットは乾燥ぎみで羽化も遅かった。本種は根食いで湿度の高いところにいるので乾燥には弱いようだ。

WF1:♂66mm

 

WF1:♂39mm
コーヒーのビンでマット無交換で羽化させた小型の♂

WF1:♀36〜38mm
赤みの強い個体と暗褐色のものが半々だった

 

WF1:♀38mm
赤みの強い♀

休眠について
本種は秋ごろ羽化し、そのまま1年間休眠して、翌年の夏活動するが、温度管理した飼育下でも同様に羽化後まったく活動せずにマットに潜ったきりだった。
撮影したりしていろいろいじってしまったものは中途半端に活動して4,5ヶ月で死んでしまった。

休眠用ケースセット
8月4日
休眠用にケースをセットした。来年赤みの強い個体同士掛け合わせて赤いF2個体が遺伝するのか調べたかったので、赤みの強い♂(大型58mm中型48mm)と♀3匹を別に管理することにした。ケースは大プラケースに埋め込みマットを7分目まで入れてセットした。
その他の個体は色もごちゃ混ぜで中プラケースで同じようにセットした。

活動開始

WF1:♂58mm

2002年5月11日
中プラケースの小型の♂が1頭活動していたので、急いでゼリーをセットした。
6月12日
中プラケースの小型♂と大きめの暗褐色の♀が交尾しているところを確認した。
6月13日
大プラケースの大型の♂も活動を開始した。
6月23日
大プラケースの大型の♂と♀が交尾していた。
以後、毎日のように交尾している。
マットはそのままで産卵用に芯が太い為使っていなかったクヌギ材を2本横にして埋めた。
国産ノコギリは材の中には卵を産まないので、材の質は関係ないからである。
産卵
7月14日
大プラケースの底に卵を1個確認した。活動を開始したのが中プラケースのものより遅かったので意外だった。

その後の飼育 F2:♂65.5mm
その後の飼育では更に赤い個体が安定して出るようになった。
 その後、無事に孵化して、たくさんの幼虫を得ることができた。
F2幼虫達も飼育したが、他多くのクワガタが増えたこともあって、マット交換が行き届かず大型は出ていないが、赤くて綺麗な個体が安定して羽化した。
やはり、体色は遺伝するようである。

 

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