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ハイイロゲンゴロウ飼育記
Eretes sticticus
 
産地:神奈川県鎌倉市
 
以前、小型種のマメゲンゴロウAgabus japonicus)を飼育しましたが、成虫飼育が容易な反面、極小の幼虫飼育に苦戦、取り出しが遅れたとはいえ、なんとか1匹のみ羽化を確認することができました。
そして今回、水田で5匹のハイイロゲンゴロウ(Eretes sticticus)を採集することができました。
小型ではありますが、マメゲンゴロウよりも倍近く大きく、水槽内で活発に泳ぎ、エサを探す姿は見ていて飽きません。去年のマメゲンゴロウの飼育経験を生かして、ハイイロでは累代飼育を目指して頑張りたいと思います。
 

ハイイロゲンゴロウ(鎌倉産/WILD)

 
 
採集
2007年6月16日
真夏のような炎天下の中、水田で複数の本種が泳ぎ回っているところを発見し5匹採集した。
水田の水に手を入れてみるとかなり暖かく、本種が非常に暑さに強いことを体感できた。
水田を泳ぐマメゲンゴロウ
水底を探し回るようにクルクルと泳いでいた。
(2007.6.16)
 
マメゲンゴロウのいた水田
水位は非常に浅く、ほとんど熱湯と化すような高温でも活動できる強靭な生命力であった。
(2007.6.16)
 
飼育開始
6月16日
 持ち帰った本種を飼育するため、まずは飼育ケースを準備することにした。
やはり観賞して楽しみながら飼育したいので、ずっと放置してあった18cmのキューブ水槽を使うことに決め、底床には田砂、足場と産卵用にマツモを2本、甲羅干しにヘゴを1本立てた。
本種はよく飛ぶため、付属のガラス蓋では半分しかカバーできない。そこで、クワガタ用保湿板を水槽サイズに切ってフタを作成した。水質が早く安定するように、大型水槽にある田砂を汚れたままの状態で使用した。
 
準備ができたので、ハイイロゲンゴロウ5匹を入れてみた。更に観賞用と掃除屋さんとしてミナミヌマエビNeocaridina denticulata denticulata)も6匹ほど入れてみた。まだ水が濁っていて透明度がよくないが、お尻に気泡を付けて活発に泳ぎ回る姿は見ていて本当に面白い。浮力が強いようで、底まで泳ぐのは大変そうだったので、15cmもある水位だと少々本種には深すぎるかもしれない。
 
次にエサを与えるために、庭にあった溜まり水からアカムシを採集した。大量に採集できたので当分は安泰、足りなくなった場合でも多数いるミズムシで代用できる。
ある程度澄んできたので、数匹のアカムシを入れてみると、臭いで分かるのか近くを懸命に探し出し、ついにはアカムシを捕食した。更に自分の体長ほどあるミナミヌマエビも捕らえて食べてしまった。
 
後は産卵するのを待つだけだが、恐らく卵も食べてしまうと思われるので、こまめに観察する必要がありそうだ。
 
6月17日
 深夜1時に水槽を見てみると、水面に浮いている状態でブ〜ンと翅を鳴らしていて、ヘゴに止まって上陸し、飛んでフタにぶつかっていた。更には水面に浮いた状態で飛ぶところも観察できた。深夜だというのに非常に活発に活動しているのは意外だった。
水槽内のハイイロゲンゴロウ
前翅の模様も個体によりバリエーションがあってなかなか面白い。
(2007.6.16)
 
ガラス面にへばり付くハイイロゲンゴロウ
(2007.6.16)
 
岩に止まって休むハイイロゲンゴロウ
尻部には呼吸するための気泡が見える。
(2007.6.17)
 
前から見たハイイロゲンゴロウ
普通種とはいえ、なかなか愛嬌があってよいペットだと思う。
(2007.6.17)
 
産卵
6月17日
 午前中に産卵していないか水草を調べてみると白く細長い2mmほどの卵が1個見つけることができた。
親に食べられるといけないので、すぐに取り出しプリンカップに移した。卵はすぐに水草から離れてしまったので、それほどの粘着性はないようである。
ハイイロゲンゴロウ達は5匹とも相変わらず活発に活動しているが、夜のように盛んに飛ぼうとすることはなく、休んだり泳ぎ回ったりの繰り返しだった。
水はやや白濁りしていたので水換えをして水位を13cmにやや下げてみた。
 
結局、午後は産卵せず1個しか得られなかったが、採集翌日に産卵してくれたので今後も期待できると思う。
ハイイロゲンゴロウの卵@
直径2mmと非常に小さい。卵は透明な膜で覆われていた。
(2007.6.17)
 
ハイイロゲンゴロウの卵A
(2007.6.17)
 
6月18日
 今日は水も落ち着いたようで、澄み切っていて見ていて気持ちがいい。
出勤時にアカムシを与えたが、たくさん採ったアカムシも少なくなってきたので、夜は細かくちぎった煮干を与えてみた。するとアカムシと同様に凄い勢いで煮干を食べてくれた。マメゲンゴロウよりも嗜好性が高いみたいだ。
 
今日は残念ながら卵は見つからなかった。午前中に産卵し、親に食べられてしまったのかもしれない。
更に昨日採った卵がカビていた。ショック・・・。

煮干を食べるハイイロゲンゴロウ
(2007.6.18)
 
飼育の近況
6月23日
 今日も相変わらず凄い食欲だが、平日も朝と夜に煮干を与えるだけで十分のようだ。ときどき産卵しているかチェックしているが、全然見つからず。
一緒に入れてあるミナミヌマエビは飼育当初ハイイロに食べられてしまったものもいたが、他のエビは捕食されることもなく元気だった。食べられてしまったエビは調子が悪く逃げられなかっただけなのかもしれない。
飼育開始当初の夜、盛んに飛翔行動をしていたのもその日だけで、落ち着いたからかそれ以来は飛ぶことなく陸にも上がることはなかった。
未だ卵が得られないのが残念だが、元気に泳ぐキューブ水槽は見ているだけで楽しい。
 
庭に置いてある水の溜まっているプラケースに大きく成長したミズムシ(Asellus hilgendorfii)がいたので3匹入れてみた。大型のミズムシは3匹共に腹に小さい♀を抱えていてずっと放すことはなかった。
しばらくするとハイイロに自分の体長近くあるミズムシを捉えて食べてしまった。体が柔らかい分、エサになり易いようだ。

ハイイロゲンゴロウの飼育水槽
(2007.6.23)
 
 
 

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